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令嬢は元暗殺者に恋をする
第41章 名前を呼んで
「違うわよ。ほんとに誰かと会話してたのよ」

「話している内容は聞こえたの?」

 さっきまで、サラに男の影など存在するわけがないと言い切っていた侍女たちだったが、すっかり興味津々という顔つきで、サラの部屋から話し声が聞こえたと言い出した侍女についっと身を乗り出すようにつめよる。

「サラ様は恋愛には興味ないって感じだったのに」

「でも、この間の夜会で、すっごく美形で長身のいい男を連れていたって話を聞いたわよ」

 侍女たちの会話はさらに続く。

「それ私も聞いた! 回りの女性たちがサラ様のお連れを狙っていたとか」

「バルコニーで二人で抱き合って、そのまま夜の薔薇園に消えてしまったって」

「その後、夜会の会場に戻らなかったって聞いたわ」

「結局、その男の人もどこの誰だかわからなかったみたいだけどね」

「でも、確かに言われてみると最近のサラ様ったらご機嫌だし、少しおきれいになったような気がしなくもないし」

「本当に誰かいい男性(ひと)でもできたのかも」

「ええ! あんな立派で素敵な婚約者がいらっしゃるのに別な男性だなんて!」

「ほんとうよ。サラ様が羨ましいわ。ファルク様と結婚できるだなんて」

「ああ、ファルク様……」

 そんな彼女たちの目に、少し離れた場所で小走りに薔薇園の方へと走っていくサラの姿が目にはいった。
 侍女たちは慌ててサラの元へと走り寄る。
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