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令嬢は元暗殺者に恋をする
第41章 名前を呼んで
甘く芳しい薔薇の香りが辺りを満たす。
季節はうつろい始め、空も空気も夏の終わりを忍ばせつつも、吹く風にはまだ熱気が孕み、いっそう花の香の濃密さを増した。
眩しいほどの陽光がトランティア家の庭園を明るく照らしだす。
その薔薇園の一角で、サラは短剣を振り回していた。
当然のことながら、正式に剣など習ったわけではなく、何度か騎士たちの訓練を目にしたのを真似ているだけだ。
本人はかなり真剣のつもりらしいが、はたから見れば何とも滑稽であった。
まるで、子どもが木の枝を振り回して騎士ごっこでもしているようで。
それにしても、もしもこんな場面を祖母に見られでもしたら間違いなく嫌みやらお小言やらを食らってしまうだろう。
使用人たちのほとんども祖母の息がかかっているため見られるのはまずい。
だから屋敷から離れた、滅多に人の来ないこの場所へとやって来たのだ。それに、ここならハルと会っても人に見られることはまずない。
今までは夜、それもみなが寝静まる頃に会っていたから、こんなにお日様がまだ高い時間にハルと会うのは新鮮な気がした。
いつもよりもハルとたくさん一緒にいることができる。
今日はどんなお話をしようか。
何をしようかと考えるだけでわくわくとした。
ひとしきり素振りの真似事を終えたサラは、じっとりと汗ばんだひたいを手の甲で拭い、ふうと息をつく。
季節はうつろい始め、空も空気も夏の終わりを忍ばせつつも、吹く風にはまだ熱気が孕み、いっそう花の香の濃密さを増した。
眩しいほどの陽光がトランティア家の庭園を明るく照らしだす。
その薔薇園の一角で、サラは短剣を振り回していた。
当然のことながら、正式に剣など習ったわけではなく、何度か騎士たちの訓練を目にしたのを真似ているだけだ。
本人はかなり真剣のつもりらしいが、はたから見れば何とも滑稽であった。
まるで、子どもが木の枝を振り回して騎士ごっこでもしているようで。
それにしても、もしもこんな場面を祖母に見られでもしたら間違いなく嫌みやらお小言やらを食らってしまうだろう。
使用人たちのほとんども祖母の息がかかっているため見られるのはまずい。
だから屋敷から離れた、滅多に人の来ないこの場所へとやって来たのだ。それに、ここならハルと会っても人に見られることはまずない。
今までは夜、それもみなが寝静まる頃に会っていたから、こんなにお日様がまだ高い時間にハルと会うのは新鮮な気がした。
いつもよりもハルとたくさん一緒にいることができる。
今日はどんなお話をしようか。
何をしようかと考えるだけでわくわくとした。
ひとしきり素振りの真似事を終えたサラは、じっとりと汗ばんだひたいを手の甲で拭い、ふうと息をつく。

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