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令嬢は元暗殺者に恋をする
第41章 名前を呼んで
 それよりも、本当にハルにお願いしたいことは別にあった。

「あのね、今日はハルにお願いが……」

「断る」

 言いかけたサラの言葉を途中で、それも即座にハルは遮る。

「まだ何も言ってない」

「剣を教えろって言いたいんだろう」

「そう! そうなのよ。よくわかったわね。ね、いいでしょう?」

「断ると言ったはずだ」

「どうして?」

 しかし、今度こそは引き下がらないと、サラは真剣な顔でハルを仰ぎ見る。

「基本ぐらいならいいでしょう? それに、何でも教えてくれるって言ったじゃない」

「何でもとは言ってない」

「言ったわよ」

「言ってない。そんなに剣を振り回したければ、騎士団にでも入れば?」

 サラは唇を尖らせた。

 それができるのならとっくにそうしているわよ、とでも言いたげだ。
 それに、騎士団に入団できるのは男子のみ。
 おそらくこの先も例外はないだろう。
 それをわかっていて言うのだからやっぱり意地が悪い。

「それでも、私が少しでも剣の扱いを覚えていれば、ハルに迷惑を掛けることもなくなると思うの」

「俺が守ってやるっと言っただろう。それでも不満? それとも俺では頼りない?」

「そうではないけれど……」

 ハルが実際剣を振るっているところを目にしたことはないが、自分で強いと言っているのだから間違いなくそうなのだろう。
 それに、この世で最強だと言ったレザンの元暗殺者に守ると言われて、頼りないなどと思うわけがない。
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