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令嬢は元暗殺者に恋をする
第41章 名前を呼んで
「剣を振り回してどうするの?」

「どうするって……」

「人を傷つけるのか?」

「それは……」

「できるの?」

「……できない」

 両腕で自分の肩を抱きしめ、サラは身を震わせた。

 浅はかだった。
 自分の身くらい守ることができたらと単純に思っただけで、人を傷つけるなど考えもしなかった。
 それ以上、言い返す言葉が見当たらなかった。

「そういうことだ」

「ごめんなさい……ただ、私もハルみたいに少しは強くなりたいと思っただけ。ねえ、ハルは最初から強かったの?」

 まさか、とハルは苦笑しながら答える。

「剣をふるうどころか、満足に握ることさえできなかったよ」

 意外すぎるハルの答えにサラは口を開けた。
 けれど、よく考えれば当たり前のことだ。
 誰だって最初は初心者。
 ハルがどんなに強いからって、剣を握ってすぐに今の強さを手に入れたわけではないはず。
 それこそ、血のにじむような努力を重ねたに違いない。

 そうしなければ、切り捨てられる、組織の中では生き残れないとハルは言っていたのだから。
 けれど、そんなハルを想像することができなかったし、努力するハルの姿を思い浮かべることもできなかった。

「ねえ、ハルにいろいろ教えてくれたお師匠様って、どんな人だったの?」
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