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令嬢は元暗殺者に恋をする
第41章 名前を呼んで
「ハルのお師匠様はものすごい猛者なのね。きっと強面で、身体が大きくて、背も高くて筋肉隆々って感じ。あたってる?」

 ハルよりも強いというくらいなのだから、きっとごつい感じの人に違いないと、思ったサラは会ったことのないレイという人物の姿を表現する。しかし、ハルは両肩を揺らしながら笑い出した。

「レイに会ったら、絶対に驚くと思う」

「驚く? やっぱり、ものすごく、ごつい人なのね? 熊みたい?」

「熊ね……」

 ハルは笑ったまま違うと首を振った。

「その反対。あんたが想像しているのと全然違う。見かけは女性みたいにたおやかな人だよ。物腰も柔らかくてきれいな人だ」

「ハルだってそうよ。怒られるかも知れないけれど、ハルだって一見すると強そうには見えないし、とてもきれいだし。前みたいにとげとげしさがなくなって、口を開かなければ……」

 おとなしそうに見えるし……と、最後の言葉はもごもごと口の中で呟く。

「俺たちは容姿も武器だと言っただろう? たいていの奴らは俺たちの見た目で油断する」

 確かに……と思わず心の中でうなずいてしまう。

「ねえ、レイという人も、ハルと似たような境遇で組織に?」

「違うよ。レイはレザンのフィクスレクス国の王子だ。いや、元王子だな」

「お、王子様っ!」

 そんなことまで聞いてしまってもいいのかしらと思いながらも、サラは素っ頓狂な声をあげ目を丸くする。
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