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令嬢は元暗殺者に恋をする
第42章 お出かけ
「ハルならいろんな女の子から声をかけられるでしょう? つき合ってって言われたことも何度もあるでしょう?」

「つき合って? ないよ」

「うそよ」

「そんなこと言われたことない」

「私に気をつかっているのね」

「俺はずっと閉じられた世界にいたし、こうして昼間の町中をそれも女の子と歩くのは初めてだよ」

 サラはあっと小さな声を落とした。
 ハルが組織を抜けて外の世界に来たのはつい最近のこと。

 もしかしたら、こうして人目の多いところに出ることじたい危険かもしれないのに。
 でも、私が初めてなんて嬉しいかも。

 サラはにこりと笑ってハルを見上げた。

「それとね、私もうひとつ気づいたの。ハルは私の歩幅にちゃんと合わせて歩いてくれるって」

「こんなところではぐれて迷子になられたら、探すのが大変だからね」

「ハル優しくて好き」

 ぽつりと呟くサラの言葉に、ハルはかすかに笑って視線を落とす。

「ねえ」

「今度は何?」

 けれど、ねえと呼びかけておきながら、サラはなかなかその先を切り出そうとしない。
 サラの目がじっとハルの手を見つめている。

「どうしたの? 言ってごらん」

「……あのね、手をつないでもいい?」

 サラは恥ずかしそうに、もじもじしながら小さな声を落とす。しかしすぐに、やっぱりいいの、というように手を振った。

「いやならいいの! 無理につないで欲しいとか思ってないし。そうよね、こんな人前でそんな恥ずかしい真似できないものね。気にしないで、ちょっと言ってみただけだから」

 しょんぼりとうなだれかけたサラに向かって、ハルの右手が差し出された。

「手」

「いいの? つないでもいいの?」

 飛びつくように、差し出されたハルの右手をきゅっと握りしめた。
 手をつなぎながら、ほんの少しハルの後ろを歩くサラは幸せそうな笑顔で回りを見渡す。
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