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令嬢は元暗殺者に恋をする
第42章 お出かけ
 私たち、みんなにどういうふうに見られているのかな。
 ちゃんと恋人同士に見えるかな。
 ハルと一緒になったら毎日……は無理でも時々はこうして町に出て手をつなぎながら歩いたりできるのかな。

「そろそろ何か食べようか」

「そうね。私もうお腹が空きすぎて限界かも」

「だね。さっきからお腹の音が鳴りっぱなし」

「鳴ってないわよ。そうだ! ハルが先生の診療所から消えてから私毎日、ハルを探すのにあちこち歩き回ったの。この通りも何度か来たわ。それでね。私食べてみたいものがあるの。ほら、あそこ」

 あそこと言ってサラは露店のひとつを指さした。
 そこにはずらりと人が行列を作って並んでいる。
 蒸した鶏肉と野菜をパイで包んだものが売られている店であった。

「すごくおいしそうな匂いがして、いつか食べてみたいなって思ったの。でも、町になんてなかなか出られないし、ひとりじゃ買えないし……私並んで買ってきてもいい? ハルはここで待ってて」

「買い方わかる?」

「もちろんわかるわ」

 ハルが差し出したお金をサラは握りしめる。

「お釣りもちゃんともらって」

「大丈夫よ」

「計算できる?」

「私そこまでばかではないから! ちょっと、どうしてそこで首を傾げるわけ?」

 待っててね、とはしゃいだ声を上げ、サラは行列に向かって走り出した。
 そんなサラの背中をハルは微笑ましい目で見つめていた。
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