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令嬢は元暗殺者に恋をする
第42章 お出かけ
 ハルはべつだん迷惑そうにしているわけでもなく、戸惑っている様子もみられない。
 かといって女の子たちに声をかけられて喜んでいるというふうでもない。
 しいていえば、まったく興味がないという感じであった。

 女の人につき合ってって言われたことないってハルは言ったけど、それって、ハルがあまり人前に出ないからだわ。
 それに、今までみたいに誰も近寄るな、みたいな気を放ってないから、ああして普通にしていたら誰だってハルのこと放っておかないもの。
 何だかたくさんの女の子たちに囲まれて行きづらいな。
 声もかけられない。

 今すぐハルの元に駆けつけたいのに足が動かなかった。
 サラは手の中の、まだほこほことしたパイに視線を落とす。

 ハル、冷めちゃうよ。
 私に気づいて。

 パイから再びハルに視線を戻すと、ようやくハルと目が合いサラは引きつった笑いを浮かべた。

「どいて」

 一言そっけなく言い放ち、取り囲む女の子たちの間をすり抜けると、こちらに向かってくる。

「あの子誰? もしかして彼女?」

「何だ、彼女いたのか。ざんねーん」

「えー確かにちょっと可愛い子だけど、でも、あの人とつり合わなくない?」

「まだ子どもじゃない」

 本人たちはひそひそと会話をしているつもりのようだが、サラの耳にはしっかりと聞こえていた。そんな彼女たちの会話にサラはうなだれる。
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