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令嬢は元暗殺者に恋をする
第43章 ハルからの贈りもの
 威勢のいい主人の声を背後に、ハルはサラの肩を抱き人込みの中へと歩き出すと、手にした包みをサラに手渡した。

「ありがとう」

 包みを受けとったサラは嬉しそうに大切そうに胸に抱きしめた。

「ほんと変わってるね。こんなものが嬉しいなんて。あんたなら、もっと高価なものたくさん持ってるだろう?」

「ううん。どんなものよりもハルからの贈り物が一番嬉しい。ねえ、さっそくつけてみてもいい?」

「今?」

「今よ」

 サラはどこかでリボンをつけられるところはないかと辺りをぐるりと見渡した。

「おいで」

 ハルはサラの腕を取り、通りを行く人の群を器用にかきわけ、大広場へと抜けた。
 複雑な模様が刻まれた白い石畳が広がり、広場の中央には大きな噴水があった。

 ハルは噴水にサラを導きその縁に腰をかけさせた。
 サラはさっそくハルに買ってもらったリボンを袋から取り出し両耳の脇で結び始める。

「できた。ねえ、どう?」

 似合うかな? と、首を傾げるサラを見たハルは肩を震わせて笑った。そして、たった今、サラが自分で結んだリボンを指さす。

「あんた、ほんとに何やっても不器用なんだね」

「おかしい?」

「きちんと結べてないよ。リボンが縦になってる」

「え、ほんと? 鏡がないからうまく結べないかも」

 うー、と声をもらしてサラはもう一度リボンを結び直そうと髪に手をあてるが、どうにもうまく結ぶことができない。

「へたくそ。かして」

 サラの手からリボンを取り、慣れた手つきでリボンをサラの柔らかな茶色い髪に編み込み可愛らしくまとめた。

「結べたよ」

 ハルの声にサラは水の張った噴水をのぞき込む。
 透明な水が鏡となってサラの顔を映し出した。

「ハル……器用すぎる。女の子の髪まで結ってしまうなんて」

「あんたが不器用すぎるだけ」

 サラはふふ、と笑ってもう一度噴水の中をのぞき込んだ。

「可愛いよ。似合ってる」

「……ありがとう。今日は嬉しいことばかりだわ」

 立ち上がったハルが腕を差し出してきた。サラは笑顔でその腕に自分の腕を絡ませた。
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