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令嬢は元暗殺者に恋をする
第43章 ハルからの贈りもの
「お母様……」

「まだ起きていたのね」

「うん、でもそろそろ寝ようかなって思っていたところ」

「少しお話をしてもいいかしら?」

「もちろんだわ!」

 フェリアは微笑みを浮かべ、ベッドに腰をかけた。

「サラは最近とてもいいことがあったのかしら?」

「私?」

「ええ、毎日嬉しそうに笑って、それに、何だかきれいになった気がするわ」

 きれいになったと母から言われ、サラははにかむようにうつむく。

「誰かいい人でもできたのね?」

 その相手が婚約者のファルクではないことは母も承知しているはず。
 母の言葉にサラは小さくうなずいた。

「まあ、どなたなのかしら。お母さんに聞かせてくれる?」

 少女のように小首を傾げて問いかける母に、サラはそっと視線を落とし手にした口紅とリボンを握りしめる。

「素敵な人よ。その人に会ったらお母様、絶対に驚くと思うの」

 フェリアは微笑みながらじっとサラの言葉に耳を傾けていた。

「とてもきれいな顔をした人なの。それに、頭がよくて優しくて強くて。私の方が先に彼のことを好きになってしまったの。最初はね、その人私に意地悪で冷たかったんだけど、でも、どうしても振り向いて欲しいと思って私頑張ったの」

「サラの思いはその人に届いたのね」

 サラは小さくうんとうなずいた。

「お母さんにその方を紹介してはくれないのかしら?」

 母の言葉にサラは沈んだ表情を浮かべる。

「私……ごめんなさい……」

 何をもってごめんなさいなのだろうか。
 ハルを両親に会わせることができないこと。
 あるいは、自分がやがてこの屋敷を出ていってしまうこと。両方だ。

「サラ、わたしもね、あなたのお父さんとの結婚を猛反対された時は駆け落ちまでしようと考えたのよ。あの人はわたしを連れてどこか、誰も自分たちの知らない遠くへ行こうと言ってくれたわ。わたしを必ず幸せにしてくれると」

 初めて聞かされたその話にサラは目を丸くする。

「お母様とお父様が駆け落ち?」
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