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令嬢は元暗殺者に恋をする
第44章 ハルとファルク
ファルクがトランティアの屋敷を訪れる少し前。
薔薇園へと辿り着いたサラは、そこにハルの姿を見つけ、嬉しそうに手を振り小走りに駆け寄った。
ふわふわと肩に背に踊るサラの髪に、昨日ハルから買ってもらった藍色のリボンが揺れていた。
「今日はハルの方が先に来ていたのね。待たせてしまったかしら」
「来たばかりだよ」
軽く息をはずませ肩を上下させるサラに、ハルはそんなに走らなくてもと苦笑する。
「ハルからもらったリボン、今日もつけてみたの。うまく結べてる?」
言って、サラは恥ずかしそうにうつむいた。
「可愛いね」
「リボンが?」
ハルの手が頬にあてられ、小指があごにかかり上向かせられた。
「違うよ。昨日も言った。あんたがだよ」
そう言って、ハルはサラの頬にちゅっとキスをする。
「可愛いよ」
サラはかあっと顔を赤くさせた。
それにしても、可愛いと真っ直ぐに自分を見つめ、ためらいもなく言ってくれるのに、どうして名前を呼ぶことが照れくさいのだろうかと不思議に思ったが、そのことは口にはしなかった。
「あ、あのね」
と、声をうわずらせ、サラは手にしていた籠をハルの前に差し出した。
「今日はお弁当を持ってきたの」
「……」
ハルは一瞬、怯えたように頬を引きつらせたが、作ってもらったの、と後に続いたサラの言葉にほっとした表情を浮かべる。
「お弁当、本当は私が作れたらいいのだけれど」
「いや……」
「なかなか厨房に入れないから」
「そのうちだね」
「そうね。ちゃんとお料理覚えてからね」
「そうだね……ところで、お弁当の中身は何?」
気になる? と、サラは籠の蓋を開けハルに見せる。
「パンとチーズとハム。どれも全部手作りなのよ。それから、こっちは蒸した鶏肉。あれ? 何か葉っぱみたいなのがのっかてるけど、何かしら」
「……ローズマリーだね。風味づけ」
「ほんとうだわ。いい香り。それから、こっちがりんごパイでしょう。果物もあるし林檎酒も。それに、焼き菓子もたくさんつめてきたの」
ハルは籠の中を見てへえ、と顔をほころばす。
薔薇園へと辿り着いたサラは、そこにハルの姿を見つけ、嬉しそうに手を振り小走りに駆け寄った。
ふわふわと肩に背に踊るサラの髪に、昨日ハルから買ってもらった藍色のリボンが揺れていた。
「今日はハルの方が先に来ていたのね。待たせてしまったかしら」
「来たばかりだよ」
軽く息をはずませ肩を上下させるサラに、ハルはそんなに走らなくてもと苦笑する。
「ハルからもらったリボン、今日もつけてみたの。うまく結べてる?」
言って、サラは恥ずかしそうにうつむいた。
「可愛いね」
「リボンが?」
ハルの手が頬にあてられ、小指があごにかかり上向かせられた。
「違うよ。昨日も言った。あんたがだよ」
そう言って、ハルはサラの頬にちゅっとキスをする。
「可愛いよ」
サラはかあっと顔を赤くさせた。
それにしても、可愛いと真っ直ぐに自分を見つめ、ためらいもなく言ってくれるのに、どうして名前を呼ぶことが照れくさいのだろうかと不思議に思ったが、そのことは口にはしなかった。
「あ、あのね」
と、声をうわずらせ、サラは手にしていた籠をハルの前に差し出した。
「今日はお弁当を持ってきたの」
「……」
ハルは一瞬、怯えたように頬を引きつらせたが、作ってもらったの、と後に続いたサラの言葉にほっとした表情を浮かべる。
「お弁当、本当は私が作れたらいいのだけれど」
「いや……」
「なかなか厨房に入れないから」
「そのうちだね」
「そうね。ちゃんとお料理覚えてからね」
「そうだね……ところで、お弁当の中身は何?」
気になる? と、サラは籠の蓋を開けハルに見せる。
「パンとチーズとハム。どれも全部手作りなのよ。それから、こっちは蒸した鶏肉。あれ? 何か葉っぱみたいなのがのっかてるけど、何かしら」
「……ローズマリーだね。風味づけ」
「ほんとうだわ。いい香り。それから、こっちがりんごパイでしょう。果物もあるし林檎酒も。それに、焼き菓子もたくさんつめてきたの」
ハルは籠の中を見てへえ、と顔をほころばす。

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