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令嬢は元暗殺者に恋をする
第45章 心にかかる不安
「さっきの男、あんたの婚約者だろう?」

「やっぱり、知っていたのね。婚約者がいたこと黙っていて怒ってる?」

 サラの表情がふっと翳りを見せる。
 ハルには婚約者の存在を、それもあの男がそうだと知られたくないと思った。

「怒ってなどいないよ。シンのやつから聞かされていた。それに、あんたほどの家柄のお嬢さんなら婚約者がいてもおかしくはない」

「そっか……ねえ、お願いだから帰れって言わないでね」

 もし、あの男がハルのことをお祖母様に話してしまったら。

 婚約者がわざわざ訪ねてきたというのに、他の人と、それも男の人と出かけてしまったなどと知られてしまったら、それこそ、本当にお屋敷から出してもらえなくなるかもしれない。

 それに……。
 あの男に何をされるか。

「言わないよ。今帰したら、あいつに何されるかわからないだろう?」

 サラはぶるっと身を震わせた。
 あいつにひどいことをされていたことも多分、ハルは知っているのね。

「ねえ、私に婚約者がいると知っても、ハルは何とも思わない?」

「どうして?」

「どうしてって……」

 まさか、そう聞き返されるとは思いもせず、サラはしゃんぼりとうなだれ自分の足下に視線を落とした。
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