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令嬢は元暗殺者に恋をする
第45章 心にかかる不安
 そんなとりとめのない予感を話したところでどうなるというのか。
 けれど、そう思い込んでしまったのはサラの大きな間違いであった。

「ううん、何でもない。ただ、あの人のことは忘れたいだけ。だから早く行こう! せっかくの時間がもったいないわ」

 心の中に渦巻く黒いもやもやを振り払い、サラは精一杯の笑みを浮かべ、ハルの手を引いて歩き出す。

 心に落ちる暗澹としたものが決して消えたわけではないが、もしかしたら、自分の思い過ごしなのかも知れない。
 きっとファルクの姿を見てしまったからそう不安を感じているのだと、無理矢理そう思うことにした。

 ごめんねハル、心配をかけさせてしまって。

 とにかく今は忘れてしまおう。
 ハルと一緒にいられる時間を大切にしたい。
 そんな自分を気遣ってくれているのか、ハルが時折、手を強く握りしめてくれた。

 それはまるで、大丈夫、俺がいるよと言ってくれているようで嬉しかった。
 言葉はなくても、ハルの気持ちは伝わってくる。
 隣を歩くハルの顔をちらりと見上げると、ハルも気づいて視線を落としてくる。目が合うたび、サラは微笑みを返した。
 薔薇園を抜けたその奥には林が広がっていた。
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