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令嬢は元暗殺者に恋をする
第45章 心にかかる不安
「何だかハル、王子様みたいで素敵……」

 何それ、と苦笑を浮かべ、ハルはおいで、とサラに手を差し出してきた。

「もしかして、一緒に乗せてくれるの?」

「一緒に乗らなかったらあんたはどうするつもり? 歩くの?」

「歩かない。乗せて!」

「ならお姫様、お手をどうぞ」

「お姫様……」

「照れてないで、手」

 うん、とうなずきハルの差し出してきた手をとると、軽々と引っ張り上げられ騎乗する。

「うわー馬ってこんなに高いのね」

「乗るの初めて?」

「初めてだわ」

「怖くない?」

「ハルと一緒だもの。怖くない」

 首を傾けてサラは振り返り、にこりとハルに笑顔を向けた。

「ハル、私のためにありがとう。嬉しいわ」

 ふわりと背後から抱きしめられる。

「喜んでくれるなら、よかったよ」

 背中越しに伝わってくるハルの温かさが心地よくて、サラは静かに目を閉じた。

「少し笑ってくれたね」

「心配かけてしまってごめんなさい。それに、私がハルにお屋敷に来てと言ったばかりに……まさかあの人があの場に来るとは思わなかったから……」

 回されたハルの手にサラは自分の手を重ねた。

「ねえハル、もしさっきファルクが剣を向けてきたら、ハルはどうするつもりだったの? 戦うつもりだった?」

 いいえ……殺してしまうつもりだったの。
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