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令嬢は元暗殺者に恋をする
第46章 遠出、そして、突然の雨
「やっぱり」

 いい! 教えてくれなくてもいい、と言いかけたところにハルの人差し指が唇にあてられた。

「好きだよ」

「……」

 不意打ちであった。
 耳元で低く、それも甘い声で吐息混じりにささやかれる。
 好きの一言に、他の誰でもない、今は私だけという強い意味が込められているようで……。

「まだ足りない? もっと言って欲しい?」

 パンを持っていた状態のまま空に浮いていた手を取られ、指先に口づけを落とされる。
 サラの手からパンがぽろりと落ち、膝の上に転がった。

「俺がどれだけあんたのことを好きで、大切に思っているか、教えてあげるよ」

「……男の人ってあまり好きとかそういう言葉、口にしないのかと思った」

「誰がそんなことを言ったの?」

「お屋敷の侍女たちが話をしているのを聞いたことがあるの。好きな人があまり好きって言ってくれないって、だから不安になるって」

「人それぞれだからね。軽々しく言えないとか、言わなくてもわかってもらえていると思っているんだろう。あるいは、その相手に興味がないか」

「ハルは違うの」

「そのかわり、俺も相手に言わせるから」

 そ、その目は私にも好きと言ってという目……。

 間近に顔を寄せ、見つめてくるハルの視線から逃れるようにうつむき、サラは小声で私も好きよ、と言う。

「どうして下を向いてしまうの? 俺の目を見て言って」

「もう! そんな意地悪しないで。あらためて言うのってすごく恥ずかしいから」

「可愛い。でも、あんまり可愛いといじめたくなる」

「い、いじめたくなるって……ハルってそういう人だったの?」

「何? 今頃気づいたの?」

 ハルはふっと口許に笑いを浮かべ、ようやく離れてくれた。
 ついでにサラの膝の上に落ちたパンを拾い手に握らされる。
 サラはパンをもぐもぐと口にしながら慌てて話題を変える。

「それで、ハルの部屋はどんな感じなのかしら」

「何もない部屋だよ。追われている身だからね。いつこの町を離れてもいいようにと思ってベッド以外何も置いてない」

「そっか……」

 サラは表情を翳らせた。
 胸がつきりと痛んだ。

 ハルは逃げ出した組織から追われている。そして、いつその組織の者がハルを捕らえにやってくるかわからない。
 何もない部屋に、ひとりで帰るのはとても寂しいことだわ。
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