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令嬢は元暗殺者に恋をする
第47章 私を愛して
 うつむき視線を足下に落としたまま、サラは沈んだ表情を浮かべた。
 雨に濡れた髪から水滴のひとしずくがこめかみに流れ、頬を伝い、ぽたりと足下に落ちる。

 ハルは自分のことを大切にすると言ってくれた。
 それは、私がハルと結ばれたいと心から思うまで、いっさい手を出さないという意味。
 大切にされてとても嬉しいはず。
 なのに、自分に触れてくれないという寂しさ、もどかしさも心のどこかにあって……。

 どんなに強く願っても、どんなに目で訴えかけても、望みを口にしない限りハルは私に触れようとはしてくれない。
 身体の力が抜けてしまうようなキスすらもしてくれない。

 恥ずかしいという思いを捨て、勇気を振り絞って素直に自分の気持ちを口にすればこの状況は変わるだろうか。
 けれど、どうしてもその一歩を踏み出す勇気をだすことができなかった。

 私、どうしたらいいのかわからない。

「服、脱いだら声をかけてね」

「うん……」

「見ないから安心して」

 背を向け離れて行こうとするハルに、ねえ、と呼びかける。

「……ほんとうは少しは見たいと思ってる?」

 自分でも信じられない言葉が口から出てしまったと思う。

「何? 見て欲しいの? 見せてくれるの?」

 目を細め、意地悪く笑うハルの指先が衣服の胸元の紐にかけられ、器用にするりと解いていく。

「や……だめ!」
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