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令嬢は元暗殺者に恋をする
第48章 心を見せて
 うう……と声をもらし、不安そうな顔でハルを見上げたサラの口からとんでもない質問がもれた。

「どのくらい……痛いの?」

 おそるおそる問いかけるサラに、ハルは苦い笑いを浮かべた。
 男の人にこんなことを聞くのもおかしな話であったかもしれない。
 いや、おかしな話だ。

 けれど、女の子同士でこういった話をすることなど今までまったくなかったし、侍女たちが会話していた内容も、自分には関係ないことだと思って今まで聞き流していた。
 その時は興味などなかったから。

「どのくらい?」

「あんたのその覚悟が揺らぐくらい。泣くよ」

「な、泣かないわ!」

「すでにもう、泣きそうな顔をしている」

「でも、泣いてない!」

 さらに口を開きかけたハルのその先の言葉を遮るように、サラはつま先立ちになってちゅっと唇に口づけをする。

 本当ならハルが教えてくれた情熱的なキスをしたいけれど、唇が遠すぎてそれはかなわない。

 背伸びをして触れるだけが精一杯。
 それでも、もう、何を言われようとも、自分の気持ちは変わらない。
 決心したのだという思いは伝わるはず。
 ハルならわかってくれるはず。
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