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令嬢は元暗殺者に恋をする
第50章 目覚めて
「……ハルこそ無理しなくても、抑えなくてもよかったのに」

 へえ、とハルは薄く目を細めた。
 その口許にいつもの意地悪な笑みが浮かんでいることに気づき、サラはうろたえる。

 えっと、私何かいけないことを言ってしまったかしら。
 ハルの目が何か怖いわ。

「そんなこと言ってしまっていいの? 今だから言える言葉だよね」

 え? と、サラは首を傾げた。
 その首筋にハルの唇が触れ、ぴくりと反応してサラは首筋を押さえ慌てて身を引く。
 ハルが悪戯げに目を細めたままのぞき込んでくる。

「俺が本気になったら、どうなるかわかってる?」

「本気って、どうなるかって……」

「次は手加減しなくていいね」

 次、と言われサラは胸をどきりとさせた。

「あの……」

「息もできないくらい、愛してあげる。壊れるのを覚悟して」

「そ、そ、そんな、どきどきするようなこと言わないで! 私、どういう顔したらいいのか困る……っ!」

 ハルの指先が胸元につんと突きつけられた。

「困るとか言って、実は少し期待してる? いいよ。期待してくれても。どうして欲しいか、どうされたいか、どうなってしまいたいか、どんな要望でも応えてあげる」

「もう! ハルやらしい!」

「何を今さら」

「それに、私期待なんて……」

「してないの?」

「それは……」

 その後の言葉が続かなくなって、サラはうう……と声をもらし口を引き結ぶ。

 もう……ハルの意地悪。
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