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令嬢は元暗殺者に恋をする
第53章 胸騒ぎ
やばいな俺。
未練がましいにもほどがある。
サラの思いは相手に通じた。
回りが驚くくらい仲良くやっている。
そんな二人の間に何か起こるとは考えられなかった。
もしも、何かあったとしても、自分が動いたところでどうなるわけでもない。むしろ、邪魔をしてしまうだけだ。
いや、今ここでサラに出会ってしまったら、封じ込めた思いがよみがえってしまいそうで……。
けれど、この胸の奥がざわつくようなこの感覚は何であろうか。
嫌な予感。
胸騒ぎ。
空になった酒盃に酒をそそぐため、今日何本目になるかわからない酒瓶に手を伸ばしたところへ、ふと手元に黒い影がさした。何者かが側に立つ気配に、シンは上目遣いでその相手を見上げる。
そこに立っていたのは、厳しい表情でこちらを見下ろすカイであった。
「おまえがこんな夜遅い時間に出歩くとは珍しいな。エレナはどうした?」
「仕事だ。まだ店にいる」
「店に? そうか、エレナも遅くまで大変だな。ちゃんと迎えに行ってやれよ」
「言われなくてもそのつもりだ」
シンは肩をすくめた。
まあ、俺が言う必要もなかったなと苦笑いをする。
「おまえも飲むか?」
「俺が飲めないのを知っているだろう」
そういえばそうだったな、とシンはぽつりとこぼし、それでこの男は結局、ここに何しに来たのだ? という目でカイを見る。
「何か用か?」
まあな、と言ってカイは椅子には座らず、腕を組んでテーブルに浅く腰をかける。
ひたいのあたりを結ぶ飾り紐を揺らし、カイは斜めに顔を傾けシンを半眼で見下ろす。
「ちょっとした情報を手に入れた。おまえの耳にいれておこうと思って」
「情報? 裏街で問題がおきたか?」
仲間たちでおさめることのできない問題が裏街で起こっているのなら、自分が出向かなければならない。しかし、カイの雰囲気からしてそういう様子でもなさそうであった。
むしろ、問題でも起きてくれた方が助かる。
一暴れでもすれば、くさくさとした気がまぎれるというもの。
未練がましいにもほどがある。
サラの思いは相手に通じた。
回りが驚くくらい仲良くやっている。
そんな二人の間に何か起こるとは考えられなかった。
もしも、何かあったとしても、自分が動いたところでどうなるわけでもない。むしろ、邪魔をしてしまうだけだ。
いや、今ここでサラに出会ってしまったら、封じ込めた思いがよみがえってしまいそうで……。
けれど、この胸の奥がざわつくようなこの感覚は何であろうか。
嫌な予感。
胸騒ぎ。
空になった酒盃に酒をそそぐため、今日何本目になるかわからない酒瓶に手を伸ばしたところへ、ふと手元に黒い影がさした。何者かが側に立つ気配に、シンは上目遣いでその相手を見上げる。
そこに立っていたのは、厳しい表情でこちらを見下ろすカイであった。
「おまえがこんな夜遅い時間に出歩くとは珍しいな。エレナはどうした?」
「仕事だ。まだ店にいる」
「店に? そうか、エレナも遅くまで大変だな。ちゃんと迎えに行ってやれよ」
「言われなくてもそのつもりだ」
シンは肩をすくめた。
まあ、俺が言う必要もなかったなと苦笑いをする。
「おまえも飲むか?」
「俺が飲めないのを知っているだろう」
そういえばそうだったな、とシンはぽつりとこぼし、それでこの男は結局、ここに何しに来たのだ? という目でカイを見る。
「何か用か?」
まあな、と言ってカイは椅子には座らず、腕を組んでテーブルに浅く腰をかける。
ひたいのあたりを結ぶ飾り紐を揺らし、カイは斜めに顔を傾けシンを半眼で見下ろす。
「ちょっとした情報を手に入れた。おまえの耳にいれておこうと思って」
「情報? 裏街で問題がおきたか?」
仲間たちでおさめることのできない問題が裏街で起こっているのなら、自分が出向かなければならない。しかし、カイの雰囲気からしてそういう様子でもなさそうであった。
むしろ、問題でも起きてくれた方が助かる。
一暴れでもすれば、くさくさとした気がまぎれるというもの。

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