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令嬢は元暗殺者に恋をする
第54章 脅しと賭け
「まったく不愉快きわまりない娘だ! だけど、まあいい、どのみちあと三日もすればおまえはこの私のものとなるのだから」

 あと三日……?

 訝しむサラの表情からその思考を読み取ったファルクはおや? 愉快そうに眉を上げた。

「おやおや、聞かされていなかったのかい? あなたと私の結婚式が三日後だということを。ああ……この私が冗談を言っているのだと思っているのかい? だったら、朝になったらあなたのお祖母様にでも聞いてみるといい」

 そんなの、知らない。
 式は夏の終わりだとお祖母様は言っていたのに、どうして?

「私があなたのお祖母様にお願いをして式を早めさせてもらったのだよ。愛するあなたと一日でも早く一緒になりたい、夏の終わりまで待てないとわがままを言ってね。あなたのお祖母様はそれはそれは喜んでくださったよ。むしろ、それは願ってもないことだと。息子も……つまりおまえの父親だね、どうしようもない女にそそのかされ、骨抜きにされて頼りがないから是非、私にこのトランティア家を盛り上げて欲しいとおっしゃってくださった。もっとも、正式な式は当初の予定通りだが、まずは内輪でささやかなお祝いをして、ひとまず夫婦になってしまおうということ」

 サラは唖然としてファルクを見つめ返す。
 一瞬、短剣を握る手が緩みそうになったが、はっとなって慌てて握り締めなおす。

 お祖母様がそんなことを……。
 私、聞いていない。
 聞かされていない!
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