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令嬢は元暗殺者に恋をする
第54章 脅しと賭け
「私のものとなった時は、どうなるかよく覚えておくといい。こんな真似をして、この私を怒らせたことを嫌というほど後悔させてあげよう。これまでのように自由など与えてはあげないよ。部屋に閉じ込め、一歩も外には出さず、私のいいつけに素直に従うよう、私の妻として相応しい女になるよう、厳しくしつけなおしてあげよう。ああ、そうだ!」

 ファルクは何かいいことを思いついたとでもいうように、ぽんと手を叩く。

「おまえを可愛がっているところを、あの少年にも見せてあげるのも面白いかもしれないね。おまえもそう思わないか? 思うだろう? 私の妻となる女に手を出した罪をあの少年にも思い知らせてあげよう。ああ……今から愉しみだよ。あの男の澄ました顔が、きれいな顔が、悔しさと怒りで歪むさまを見るのは!」

 ファルクの顔にじわりと愉悦的な色が広がっていく。
 それを見たサラは嫌悪もあらわに眉間を寄せた。
 ファルクはシンに打ち負かされている。
 おそらく、ファルクの言うあの少年とは、ハルのことを言っているのだろう。
 そんなことをしたら、ただで済まないのはファルクの方だということも知らないで。

「たっぷりと、思い知らせてあげよう」

 いたぶってあげよう、と嗜虐的な笑みを口許に広げた。が、すぐにその顔から笑みが消え、怒気もあらわな目でサラを見据える。

「覚悟するといい」

 そう言い残すと、ファルクは肩を怒らせ、くるりと背を向け扉に向かって歩いて行く。
 乱暴に扉を閉める音に、サラびくりと肩を跳ねた。
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