この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
令嬢は元暗殺者に恋をする
第56章 口止め
サラの声に、侍女は目の前の少年が賊ではないことを悟ったらしい。しかし、そうでないのなら、この少年はいったい何だというのだろうか?
状況がまったくわからない。
けれど、今自分は殺されかけようとしている。
そんな思いがあからさまに侍女の表情にあらわれていた。
ハルは思わず苦笑する。
侍女に危害を加えるつもりはない、だから、驚かないでとサラに伝えたが、やはりそうもいかなかったようだ。
もっとも、こんな状況を見せつけられて、おとなしくしていろという方が無理なことである。
わかってはいたが、やめるつもりはない。
首筋にあてた短剣はそのままに、ハルはゆっくりと侍女のふさいでいた口から手を離した。
「ころ、殺さ……」
歯をかたかたと鳴らし、侍女は目に涙を浮かべ震える声で懇願する。
「俺のいうことに従えば、殺しはしない」
「何でもきくから……だから……」
殺さないで、と涙混じりに弱々しい声を落とす侍女に、ハルは意味ありげな笑いを口許に刻む。
「そう簡単に男に何でもと言ってしまっていいのか?」
「……」
ハルはふっと笑って、喋りやすくなるよう、侍女の喉元にあてていた短剣を少しばかり緩めた。
状況がまったくわからない。
けれど、今自分は殺されかけようとしている。
そんな思いがあからさまに侍女の表情にあらわれていた。
ハルは思わず苦笑する。
侍女に危害を加えるつもりはない、だから、驚かないでとサラに伝えたが、やはりそうもいかなかったようだ。
もっとも、こんな状況を見せつけられて、おとなしくしていろという方が無理なことである。
わかってはいたが、やめるつもりはない。
首筋にあてた短剣はそのままに、ハルはゆっくりと侍女のふさいでいた口から手を離した。
「ころ、殺さ……」
歯をかたかたと鳴らし、侍女は目に涙を浮かべ震える声で懇願する。
「俺のいうことに従えば、殺しはしない」
「何でもきくから……だから……」
殺さないで、と涙混じりに弱々しい声を落とす侍女に、ハルは意味ありげな笑いを口許に刻む。
「そう簡単に男に何でもと言ってしまっていいのか?」
「……」
ハルはふっと笑って、喋りやすくなるよう、侍女の喉元にあてていた短剣を少しばかり緩めた。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


