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令嬢は元暗殺者に恋をする
第56章 口止め
「わ、わかったから……用意するから。すぐに……」
「できないのではなかったのか? それともさっき言った言葉は嘘だったと?」
「許して……」
頼りない声を落とし、とうとう侍女の目から涙がこぼれ落ちる。
「もし、誰かに見つかったらそれこそ、怪我をしたのだと言え、理由などいくらでも考えつくだろう」
侍女はわかった、と何度も首を縦に振りうなずいた。
「それと、わかっているだろうが、おまえがこの部屋で見たことは俺のことも含めて決して誰にも言うな」
「……」
「ファルクがこの部屋に来たこともだ」
喉元にあてていた短剣を水平にかまえ、ゆっくりと侍女の目元まで持っていく。
刃が両方の眼球に触れそうな、まばたきをすれば、まつげが刃にあたるほどの間近な位置であった。
喉の奥で引きつった悲鳴を飲み込み、侍女は目の前の刃から逃れようと身を引くが、背後が壁では逃げることはできない。
いや、少しでも動いたら……。
「やめ……て……」
「いいな」
声も出せずに侍女は口だけをぱくぱくとさせる。
「何も見ていないと誓わなければ、おまえのその両目を切り裂く。これは脅しではない。本気だ」
「できないのではなかったのか? それともさっき言った言葉は嘘だったと?」
「許して……」
頼りない声を落とし、とうとう侍女の目から涙がこぼれ落ちる。
「もし、誰かに見つかったらそれこそ、怪我をしたのだと言え、理由などいくらでも考えつくだろう」
侍女はわかった、と何度も首を縦に振りうなずいた。
「それと、わかっているだろうが、おまえがこの部屋で見たことは俺のことも含めて決して誰にも言うな」
「……」
「ファルクがこの部屋に来たこともだ」
喉元にあてていた短剣を水平にかまえ、ゆっくりと侍女の目元まで持っていく。
刃が両方の眼球に触れそうな、まばたきをすれば、まつげが刃にあたるほどの間近な位置であった。
喉の奥で引きつった悲鳴を飲み込み、侍女は目の前の刃から逃れようと身を引くが、背後が壁では逃げることはできない。
いや、少しでも動いたら……。
「やめ……て……」
「いいな」
声も出せずに侍女は口だけをぱくぱくとさせる。
「何も見ていないと誓わなければ、おまえのその両目を切り裂く。これは脅しではない。本気だ」

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