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令嬢は元暗殺者に恋をする
第56章 口止め
「誰かとキスをした?」
侍女は驚きに目を見開き息を飲む。
唐突すぎるハルの問いかけに、取りつくろう暇さえなかったようだ。
「たとえば、ファルクと?」
侍女にしか聞こえない声でハルは小声で問いかける。
侍女の目が何故それを知っているの? と言わんばかりに動揺に揺れていた。
頬に添えていたハルの親指が、そっと侍女の唇の端をなぞる。
「あんた、鏡を見ていないのか? 口紅がよれている」
よく見れば、薄い紅色の口紅が唇の端に跡をひいてにじんでいた。
指摘され、侍女は慌てて手の甲で唇を拭う。
「違っ!」
自分でこすったのだと言い訳をすることもできたであろうに。
「わ、私……そんなつもりでは……だって、ファルク様が突然、私にっ!」
さらに言葉を継ごうとした侍女の唇に指先をあて、その先の言葉を封じる。
うかつにも、サラがいる前で何を喋ろうとするのか。
彼女の言い訳など、どうでもいい。
興味もないし、聞きたいとも思わない。
何故、サラの部屋にファルクを通したのだと責めるつもりもない。
いや、責めれば、あの男からサラを守ることができなかった自分の不甲斐なさの八つ当たりとなってしまいそうだったから。
彼女にもっとひどい仕打ちをしてしまうかもしれないから。
侍女は驚きに目を見開き息を飲む。
唐突すぎるハルの問いかけに、取りつくろう暇さえなかったようだ。
「たとえば、ファルクと?」
侍女にしか聞こえない声でハルは小声で問いかける。
侍女の目が何故それを知っているの? と言わんばかりに動揺に揺れていた。
頬に添えていたハルの親指が、そっと侍女の唇の端をなぞる。
「あんた、鏡を見ていないのか? 口紅がよれている」
よく見れば、薄い紅色の口紅が唇の端に跡をひいてにじんでいた。
指摘され、侍女は慌てて手の甲で唇を拭う。
「違っ!」
自分でこすったのだと言い訳をすることもできたであろうに。
「わ、私……そんなつもりでは……だって、ファルク様が突然、私にっ!」
さらに言葉を継ごうとした侍女の唇に指先をあて、その先の言葉を封じる。
うかつにも、サラがいる前で何を喋ろうとするのか。
彼女の言い訳など、どうでもいい。
興味もないし、聞きたいとも思わない。
何故、サラの部屋にファルクを通したのだと責めるつもりもない。
いや、責めれば、あの男からサラを守ることができなかった自分の不甲斐なさの八つ当たりとなってしまいそうだったから。
彼女にもっとひどい仕打ちをしてしまうかもしれないから。

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