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令嬢は元暗殺者に恋をする
第57章 サラを手放さない
「おまえもいい加減黙れ」

 ミリアはびくりと肩を跳ねた。
 ハルの威圧的な態度と口調に萎縮してしまい、サラと同様、うつむいてしまった。

「おまえの泣き声で他の誰かがやって来たらどうする。黙らないのなら、黙らせてやろうか」

 ミリアの顔がまたしても引きつり青ざめる。

「ご、ごめんなさい……」

「それよりも、これを処分しろ」

 ハルは引き裂かれ、血で汚れたサラが着ていた服を侍女の足下に放った。

「さっさとやれ」

 侍女は足下をふらつかせながら、手にした服を処分するため、胸に丸めて抱え込みこの場から、いや、ハルから逃げるように部屋から出て行ってしまった。

 侍女が出て行ったのを確認し、ハルは床に投げ捨てられた数冊の本を拾い机の上に戻す。ふと、足下に落ちていた藍色のリボンの片方に目をとめ、それを拾い上げきつく手に握りしめる。

 サラはようやく緊張を解き、細く息を吐き出した。

「きついことを言ってしまって驚いた?」

「ううん、ハルの言うとおりだと思う。でも、ハルごめんなさい……私、ミリアを責めることなんて、どうしてもできなかった……」

 サラの言葉を遮り、ハルは小さなその身体をそっと抱きしめた。
 サラの両手が背中に回りきゅっと抱きしめ返してくる。
 小さな身体は震えていた。
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