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令嬢は元暗殺者に恋をする
第58章 解き放つ怒り
「お母様……」
サラの母、フェリアは驚いたように口許に手をあてた。が、すぐにその花のように美しい面にふわりと笑みを浮かべる。
この状況を理解したようだ。
自分の娘が誰の腕に抱きかかえられているのか。
それは、サラが愛した男性(ひと)なのだと。
フェリアの笑みは心の底から娘の幸福を願う母親の顔であった。
けれど、これまで慈しみ育ててきた娘が、他の誰かの手に渡ってしまうという寂しさも、その顔にはかすかに浮かんでいた。
「お母様……私……」
ごめんなさい、と呟いたサラの両腕が首に回り抱きつく。
それは、たとえ引き止めても、私はこの人について行くのだという強い意志の表れであった。
何も言わなくてもわかっているわ、というようにフェリアは緩やかに首を振り、そして、静かな眼差しを今度はハルへと向けた。
「どうか、サラを……」
そこまで言いかけたフェリアだが、しかしいいえ、と頭を振り、その後に続く言葉を閉ざす。
ハルは口許に緩やかな笑みを浮かべ、背後の女性に会釈をするように、わずかにまぶたを落とした。そして、女に背を向け再び歩き出す。
サラの母、フェリアは驚いたように口許に手をあてた。が、すぐにその花のように美しい面にふわりと笑みを浮かべる。
この状況を理解したようだ。
自分の娘が誰の腕に抱きかかえられているのか。
それは、サラが愛した男性(ひと)なのだと。
フェリアの笑みは心の底から娘の幸福を願う母親の顔であった。
けれど、これまで慈しみ育ててきた娘が、他の誰かの手に渡ってしまうという寂しさも、その顔にはかすかに浮かんでいた。
「お母様……私……」
ごめんなさい、と呟いたサラの両腕が首に回り抱きつく。
それは、たとえ引き止めても、私はこの人について行くのだという強い意志の表れであった。
何も言わなくてもわかっているわ、というようにフェリアは緩やかに首を振り、そして、静かな眼差しを今度はハルへと向けた。
「どうか、サラを……」
そこまで言いかけたフェリアだが、しかしいいえ、と頭を振り、その後に続く言葉を閉ざす。
ハルは口許に緩やかな笑みを浮かべ、背後の女性に会釈をするように、わずかにまぶたを落とした。そして、女に背を向け再び歩き出す。

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