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令嬢は元暗殺者に恋をする
第59章 深い闇へ、落ちていく
「お願いだ。どうかサラを……」
頼む、と声を落としてハルはテオに向かって深く頭を下げる。
「や……」
そんなハルの態度に、テオは言葉をつまらせ面を食らったようだ。
その顔は、まさか頭を下げられるとは思いもしなかったという驚きの顔であった。
「やめてくれ……頭を下げなくても、病人や怪我人を診るのが僕の仕事だ。ましてや、サラは僕にとっても大切な友人」
「すまない」
「だから、やめてくれと……」
「あんたになら、安心してサラをあずけられる」
その言葉は半分は本当で、半分は偽りであった。
本当なら、誰の手にも彼女を渡したくはないというのが本音だ。
けれど、今はそんなことを言っていられない。
抱えていたサラをテオに託そうとしたその時、サラがゆるりとまぶたを開いた。頼りなく揺れる視線でハルを見つめる。
「ハル……?」
「先生の所だよ」
屋敷を抜け、こうしてサラの信頼する医師の元へとやってきた。なのに、安心するどころか、ハルの目を見つめるサラの表情が何かの不安に怯えるように、泣きそうに辛そうに歪んだ。
気づいているのだ。
俺がこれから何をしようとするのかを。
頼む、と声を落としてハルはテオに向かって深く頭を下げる。
「や……」
そんなハルの態度に、テオは言葉をつまらせ面を食らったようだ。
その顔は、まさか頭を下げられるとは思いもしなかったという驚きの顔であった。
「やめてくれ……頭を下げなくても、病人や怪我人を診るのが僕の仕事だ。ましてや、サラは僕にとっても大切な友人」
「すまない」
「だから、やめてくれと……」
「あんたになら、安心してサラをあずけられる」
その言葉は半分は本当で、半分は偽りであった。
本当なら、誰の手にも彼女を渡したくはないというのが本音だ。
けれど、今はそんなことを言っていられない。
抱えていたサラをテオに託そうとしたその時、サラがゆるりとまぶたを開いた。頼りなく揺れる視線でハルを見つめる。
「ハル……?」
「先生の所だよ」
屋敷を抜け、こうしてサラの信頼する医師の元へとやってきた。なのに、安心するどころか、ハルの目を見つめるサラの表情が何かの不安に怯えるように、泣きそうに辛そうに歪んだ。
気づいているのだ。
俺がこれから何をしようとするのかを。

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