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令嬢は元暗殺者に恋をする
第62章 報復 -3-
「アイザカーンの暗殺者二十人だな」

 延々とベゼレート医師を罵り続けるファルクを遮るように、ハルはようやく言葉を発した。
 もはや聞くに堪えがたいとばかりに。

 発した声はあくまでも静かであったが、その胸のうちに孕んだ怒りは、いまかいまか、早く解き放てと、いっそう膨れあがるばかり。そして、解き放った瞬間、怒りの業火は容赦なくファルクを一気に飲み込んでしまうであろう。

「そう、二十人だよ。暗殺者二十人をどうにかしない限り、おまえはあの娘を救うことなどできない。だが、そんなことはとうてい無理。つまり、おまえにはどうすることもできないということ。これがおまえの現実だ」

 そう、これが俺の現実だ。
 できることなら戦いとか殺しとか、そんな血なまぐさい事から遠ざかって、サラとともに静かに穏やかに暮らしていきたいと思った。それができると思っていた。

 一緒に住むようになったら、たくさんやりたいことがあると楽しそうに、嬉しそうに語ってくれたサラの言葉を、ともに叶えていきたいと思っていた。

 俺も、楽しみにしていたんだよ。
 本当だよ、サラ。

 しかし、それは叶わぬこと。

 自分には許されない願い。
 結局、戦う運命から、逃れることなどできないのか。
 ようやく手に入れかけようとしていた幸せが、崩れ落ちていく。
 静かにけれど、急速に。

 目の前の男ひとりを懲らしめ地獄の底に叩きつけてやるつもりが、よもやこんな事態に向かうことになろうとは、まったく想像もしていなかった。

 ハルは静かにまぶたを伏せ、己の手のひらに視線を落とす。
 サラが屋敷に連れ戻されてしまった。
 だが、悲観することはない。
 むしろその方が都合がいいと考えるべきかもしれない。

 このままサラを連れて逃げ、追いかけてくるこの男が雇った暗殺者を細切れで倒すよりも、カーナの森でこの男の企みごと、ひとり残らず、一気にまとめて叩いてしまう方が、何度もサラを危険な目にさらすことなく、無関係な者を巻き込むこともなく効率がいい。
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