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令嬢は元暗殺者に恋をする
第62章 報復 -3-
 戦いはカーナの森。
 相手は暗殺者二十人。

 アイザカーンの暗殺者すべてを倒し、この男の計画を阻止してサラを守る。
 相手がレザンの者でないのなら。
 本気になった自分ならやれる。

 アイザカーンの暗殺者など、何人、いや、何十人相手になろうと、恐れるに足りない。
 やらなければ、サラを守ることはできない。

 だが……。
 そんなことをしてしまえば──。
 間違いなく、組織に自分の存在がばれてしまうだろう。

 ハルは見つめていた己の手を握りしめ震わせた。
 その瞳に表情に、一瞬だが痛々しくせつない色が過ぎる。

 それに……。

 本性を剥き出しにしたもうひとりの自分を、壮絶になるであろう自分の姿をサラにだけは見られたくはなかった。
 サラを怖がらせてしまうかもしれない。
 もしかしたら、嫌われてしまうかもしれない。
 サラの心が自分から離れていくかもしれない。
 いや、むしろそれでいい。

 確実に組織にばれてしまうとわかっていながら、サラと一緒になることなどできない。

 サラを巻き込むわけにはいかない。
 何をためらうという。
 大切な人を守る為に俺は戦う。
 俺の力は、強さは、そのためにある。

 口許に笑いを刻むハルの予想外の反応に、ファルクは眉根をひそめ訝しむ。

 絶望に突き落とされ、悲痛と悲壮に満ちた顔が見たかった。
 なのに、相手の笑いに余裕さえ感じられるのは気のせいだろうか。
 余裕? いや、単なる思い過ごしだ。ファルクの顔はそんなふうであった。

 ハルはゆっくりと落としていた視線を手元から外し、まなじりを決する。

 迷いもない。
 ためらいもない。
 恐れもない。
 その藍色の瞳に宿るのは決意の色。

「その笑いは何だね? 何が可笑しい?」

 底知れぬハルの態度にファルクも何やら不穏な気配を感じたのであろう。
 それでも、自分が目の前の少年に負けるわけがないという、己の間違った自信と確信が、この後自身の身を滅ぼすとも知らずに。

「なるほど。もはや笑うしかないというわけだな。そう、地位も権力も金も力もないおまえに何ができるという。そうさ、何もできやしないのだ。足掻きに足掻いて、己の無力さを知れ。そうして、自分の女がこの私のものになっていくのを、悔しさに身を悶えさせながら指をくわえて見ているがいい!」
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