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令嬢は元暗殺者に恋をする
第62章 報復 -3-
 もはや笑うしかなかった。
 根本的に話にならないのだ。
 これだけ側にいながら殺気を放っても、この男はまったく気づこうともしない。
 相手の実力をはかることもできない。

「だから何なのだ! その笑いは」

「可笑しいから笑ったんだ」

「だから、何が可笑しい! つべこべ言わずに早く剣を抜け!」

「どうして貴様ごときに、この俺が剣を抜かなければならない」

「それはどういう意味だ!」

「わからないのか? 剣など使うまでもないと言った。頭の悪い男だな」

「な……な! 今何と言ったのかね? 頭が悪いだと?」

「ちゃんと聞こえているじゃないか」

「それは、私のことを言ったのかね? こ、この私の頭が悪いと言ったのか?」

「他に誰がいる。いちいち聞き返すな」

「くそがきが! ああ言えばこう言うと減らず口を叩きやがって! いちいち癇に障る!」

「わざと貴様の神経を逆なでして反応を愉しんでいるんだ」

 そのくらい気づけと、肩をすくめるハルに対し、ファルクは片足を踏みならした。
 よほど、頭が悪いと言い返されたことが悔しかったのか、たちまち、ファルクの顔が怒気色に染まっていく。
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