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令嬢は元暗殺者に恋をする
第65章 報復 -6-
「それは……それは偶然……っ!」

 ファルクの肩にかけていた足に力を入れ強く壁に押しつける。

「最初に言っておく。嘘をついたらどうなるかわかっているな」

 と、強く念を押すと、ファルクは発しかけた言葉を飲み込みばつの悪い顔をする。

「貴様はこれを手に入れるのにどれだけ苦労したかと言った。なのに、偶然手に入れたとはおかしな話だろう? それとも、貴様の前に都合良く毒を持った人物が現れたというのか?」

「それは……」

「どこで手に入れた。いや、誰にもらった?」

 しばしの沈黙の後、ようやく口を開いたファルクは、今にも消え入りそうな弱々しい声を放ち白状する。

「老婆から……貰ったのだ……」

 老婆? とハルは眉根を寄せる。

「その老婆とは誰だ?」

「知らない……本当だ!」

 まだ白を切るというのか。

「貴様は知らない者から得たいの知れないものを毒だと言われてもらい、その効果を確かめることもなく信じたというのか。この中身がただの水だとしたらどうする。そんな不確かなものをあてにして、サラを殺してトランティア家を手中におさめようという、だいそれた計画を実行するつもりだったのか?」

 ファルクはうっ、と声をつまらせた。
 真実を悟られまいと咄嗟にハルから目をそらす。が、そんなことをしたことろで無駄なこと……。
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