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令嬢は元暗殺者に恋をする
第65章 報復 -6-
ファルクはうう……と呻き声をもらし、そして、もはや嘘をつくことも、だんまりを決め込むことも無理だと観念し、がくりと肩を落とす。
相手が脅しで言っているのではないということは、すでに身にしみている。そして、とうとうファルクの口からその人物があがった。
「女王陛下だ……」
しかし、ハルの顔に驚きの色はなかった。むしろ、ある程度は想定していたという。
「いや……厳密に言うならば、女王陛下の側にいつも腰巾着のようにはべっている老婆だ。背の小さい、片目の潰れた薄汚い……その老婆からもらった。女王陛下も、何故あんな醜い老婆を側に置いているのかわからない。何度か女王陛下に拝謁する機会があったが、いつも必ずその老婆が女王陛下の側にひっついていて離れようとはしない」
頭をうなだれたまま、ファルクはいったん、言葉を切り、大きく息を吸って吐き出した。そして、続ける。
「ある日のことだ……突然、その老婆が私の元へとやってきて、それを……」
それをと歯切れ悪く言って、ファルクはハルの手の中にある瓶をちらりと見る。
「瓶を私の手の中に無理矢理、押し込んだ。効果は先ほど話した通り。そして、これを使えば、何もかもすべて、私の思う通りに事が運ぶ。だから、好きに使えと老婆は私に言った……」
それは、明確には告げずとも、暗にサラを殺害してしまえと仄めかしているということだ。
なるほど。
徐々に見えてきたような気がする。
「女王が貴様に接触してきたのは最近のこと。そう……サラとの婚約が決まった直後だな?」
ファルクは勢いよく顔を上げ、何故、わかったのだと首を傾げる。
ファルクの背後には女王を騙るイザーラがいる。
強力すぎる後ろ盾だ。
だが……。
察するところ、今のファルクでは彼女の深い信頼を得ているというまでには至っていないようだ。そして、ファルク自身も少なからずそのことに気づいているのだろう。
目をかけてもらえたとはいっても、女王にとって不利な存在となれば、容赦なく切り捨てられると。
イザーラがファルクに近づいたのは、ファルク自身を必要としたのではない。
トランティアという家名を継ぐであろう、ファルクを欲した。
それだけのことだった。
相手が脅しで言っているのではないということは、すでに身にしみている。そして、とうとうファルクの口からその人物があがった。
「女王陛下だ……」
しかし、ハルの顔に驚きの色はなかった。むしろ、ある程度は想定していたという。
「いや……厳密に言うならば、女王陛下の側にいつも腰巾着のようにはべっている老婆だ。背の小さい、片目の潰れた薄汚い……その老婆からもらった。女王陛下も、何故あんな醜い老婆を側に置いているのかわからない。何度か女王陛下に拝謁する機会があったが、いつも必ずその老婆が女王陛下の側にひっついていて離れようとはしない」
頭をうなだれたまま、ファルクはいったん、言葉を切り、大きく息を吸って吐き出した。そして、続ける。
「ある日のことだ……突然、その老婆が私の元へとやってきて、それを……」
それをと歯切れ悪く言って、ファルクはハルの手の中にある瓶をちらりと見る。
「瓶を私の手の中に無理矢理、押し込んだ。効果は先ほど話した通り。そして、これを使えば、何もかもすべて、私の思う通りに事が運ぶ。だから、好きに使えと老婆は私に言った……」
それは、明確には告げずとも、暗にサラを殺害してしまえと仄めかしているということだ。
なるほど。
徐々に見えてきたような気がする。
「女王が貴様に接触してきたのは最近のこと。そう……サラとの婚約が決まった直後だな?」
ファルクは勢いよく顔を上げ、何故、わかったのだと首を傾げる。
ファルクの背後には女王を騙るイザーラがいる。
強力すぎる後ろ盾だ。
だが……。
察するところ、今のファルクでは彼女の深い信頼を得ているというまでには至っていないようだ。そして、ファルク自身も少なからずそのことに気づいているのだろう。
目をかけてもらえたとはいっても、女王にとって不利な存在となれば、容赦なく切り捨てられると。
イザーラがファルクに近づいたのは、ファルク自身を必要としたのではない。
トランティアという家名を継ぐであろう、ファルクを欲した。
それだけのことだった。

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