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令嬢は元暗殺者に恋をする
第70章 戦い前夜
ハルは、おまえか……と、特に驚いたふうもなく、感情ひとつない低い声でぽつりとこぼす。
「おまえか……じゃねえよ! そんな部屋の隅っこで灯もつけず、ひとりで膝を抱えて、いったい何してんだよ!」
何をしているのだと問いかけられても、答えようがない。
何もしていないのだから。
「サラとあいつの結婚式が三日後ってカイの奴から聞いて。いや、もう明日になるが、どうなってんだと思ってずっと、おまえのことを探していたんだ。なのに、おまえは……」
目の前に立つ人物──シンは、今にもつかみかからんばかりの勢いであった。
どうやら、サラの結婚式が早まったという話はシンの耳にも届いたらしく、それを聞いて、いても立ってもいられなくなり、何度もここへ足を運んできたようだ。
けれど、部屋に来ても誰の姿もなく、裏街の人間を使ってようやく、ハルがサラを連れてベゼレート医師の診療所へやってきたところまでは突き止めたが、結局、サラは屋敷へと連れ戻され、その後、ハルの姿は途絶え、そうこうするうちに、いよいよ結婚式が明日へと迫ってきたというわけであったという。
てっきりサラを連れ出して、とうにこのアルガリタの町を離れてしまっていると思っていただけに、拍子抜けだという様子だ。
自分を見下ろすシンの目は、みすみすファルクにサラを渡してしまうつもりなのかと、責めているようでもあった。
「おまえか……じゃねえよ! そんな部屋の隅っこで灯もつけず、ひとりで膝を抱えて、いったい何してんだよ!」
何をしているのだと問いかけられても、答えようがない。
何もしていないのだから。
「サラとあいつの結婚式が三日後ってカイの奴から聞いて。いや、もう明日になるが、どうなってんだと思ってずっと、おまえのことを探していたんだ。なのに、おまえは……」
目の前に立つ人物──シンは、今にもつかみかからんばかりの勢いであった。
どうやら、サラの結婚式が早まったという話はシンの耳にも届いたらしく、それを聞いて、いても立ってもいられなくなり、何度もここへ足を運んできたようだ。
けれど、部屋に来ても誰の姿もなく、裏街の人間を使ってようやく、ハルがサラを連れてベゼレート医師の診療所へやってきたところまでは突き止めたが、結局、サラは屋敷へと連れ戻され、その後、ハルの姿は途絶え、そうこうするうちに、いよいよ結婚式が明日へと迫ってきたというわけであったという。
てっきりサラを連れ出して、とうにこのアルガリタの町を離れてしまっていると思っていただけに、拍子抜けだという様子だ。
自分を見下ろすシンの目は、みすみすファルクにサラを渡してしまうつもりなのかと、責めているようでもあった。

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