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令嬢は元暗殺者に恋をする
第70章 戦い前夜
きっぱりと言い切ったハルの言葉に、シンは整った眉をしかめた。
軽薄そうに見えて男気のある奴だ。
腕もたつ。
そうでなければ、荒くれ者が集う裏街の頭(かしら)などつとまるわけがない。
アイザカーンの暗殺者とやり合ったとしてもひけをとることはないだろう。
一度はシンと剣を交えた。シンの強さも実力も認めているつもりだ。
サラを助けたいと思う気持ちは同じ。けれど、二人で力を合わせて戦うつもりなど初めからない。
暗殺者との戦いにシンを巻き込みたくはない、シンに万が一のことがあったときのことを考えてでもない。
単純に気が散る。
それだけの理由であった。
「はは……気が散るって、ずいぶんな言い方だな」
あまりなハルの物言いに、怒るどころか呆れてしまった。
言い返すつもりが、返す言葉が見当たらなかった。
顔を引きつらせ、ただ、笑うしかなかった。
はっきりと言う、と言いながらも、それでもハルにしては遠回しに言葉を選んだのかもしれない。
けれど……。
結局、つまるところ早い話が、俺がいたら邪魔だってことじゃねえか、とぽつりとこぼしながらシンは眉を寄せ、憮然とした表情で口許を引き結ぶ。
しかし、そこまで言い切られてしまっては、あきらめるしかないのか。
それでも戦うと強引に押し切るには、シンを射抜くかの如きハルの目が、おまえが手を出すのは許さないと含みを持たせ威圧的に告げている。
何より、ハルを説得できるだけの言葉を見つけることができなかった。
たとえ、何を言われてもという意気すら、ハルの一言とその目で消失させられてしまった。
軽薄そうに見えて男気のある奴だ。
腕もたつ。
そうでなければ、荒くれ者が集う裏街の頭(かしら)などつとまるわけがない。
アイザカーンの暗殺者とやり合ったとしてもひけをとることはないだろう。
一度はシンと剣を交えた。シンの強さも実力も認めているつもりだ。
サラを助けたいと思う気持ちは同じ。けれど、二人で力を合わせて戦うつもりなど初めからない。
暗殺者との戦いにシンを巻き込みたくはない、シンに万が一のことがあったときのことを考えてでもない。
単純に気が散る。
それだけの理由であった。
「はは……気が散るって、ずいぶんな言い方だな」
あまりなハルの物言いに、怒るどころか呆れてしまった。
言い返すつもりが、返す言葉が見当たらなかった。
顔を引きつらせ、ただ、笑うしかなかった。
はっきりと言う、と言いながらも、それでもハルにしては遠回しに言葉を選んだのかもしれない。
けれど……。
結局、つまるところ早い話が、俺がいたら邪魔だってことじゃねえか、とぽつりとこぼしながらシンは眉を寄せ、憮然とした表情で口許を引き結ぶ。
しかし、そこまで言い切られてしまっては、あきらめるしかないのか。
それでも戦うと強引に押し切るには、シンを射抜くかの如きハルの目が、おまえが手を出すのは許さないと含みを持たせ威圧的に告げている。
何より、ハルを説得できるだけの言葉を見つけることができなかった。
たとえ、何を言われてもという意気すら、ハルの一言とその目で消失させられてしまった。

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