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令嬢は元暗殺者に恋をする
第71章 月影の森
手放しで綺麗だ、愛していると心にもない言葉を口にするファルクに、サラはひとことも声を発することなく、にこりともせず、それどころか夫となるファルクとはいっさい目も合わせようとはしなかった。
そして、結婚式を終えた後、そのままアルガリタの南方にある別荘地で二人で過ごすことになるのだと知り、サラはさすがに顔を青ざめさせた。
この仮の結婚式もそうであったが、別荘地で、それもファルクと二人っきりで過ごすなど何も聞かされていない。
それに、何故こんな夜も更けようとした時分に馬車に乗って出かけるのか。
それどころか、カーナの森は数ヶ月前に賊が現れたと警戒していることはファルクとて当然知っているはずなのに、何故、護衛のひとりもつけずに向かうのか。
嫌な予感が胸を不安にさせた。
それ以上に、屋敷を離れてしまったら、ハルとは会えなくなってしまう。
自分の居場所がハルにわからなくなってしまうとサラは恐れた。
ハル……。
虚ろな目に映るのは暗い夜の森。
ぽっかりと口を広げているそこには深遠の闇。
ふと、絶望をともなって闇に飲み込まれていきそうになる感覚に囚われかけ、サラはふるっと頭を振る。
それでも、隣に座っている男の顔を見るよりはましだと、サラは頑なにファルクから顔を背けたまま。
視界の端にすらその姿が目に映るのが許せないとばかりに、窓の外の闇に視線を向けていた。
そして、結婚式を終えた後、そのままアルガリタの南方にある別荘地で二人で過ごすことになるのだと知り、サラはさすがに顔を青ざめさせた。
この仮の結婚式もそうであったが、別荘地で、それもファルクと二人っきりで過ごすなど何も聞かされていない。
それに、何故こんな夜も更けようとした時分に馬車に乗って出かけるのか。
それどころか、カーナの森は数ヶ月前に賊が現れたと警戒していることはファルクとて当然知っているはずなのに、何故、護衛のひとりもつけずに向かうのか。
嫌な予感が胸を不安にさせた。
それ以上に、屋敷を離れてしまったら、ハルとは会えなくなってしまう。
自分の居場所がハルにわからなくなってしまうとサラは恐れた。
ハル……。
虚ろな目に映るのは暗い夜の森。
ぽっかりと口を広げているそこには深遠の闇。
ふと、絶望をともなって闇に飲み込まれていきそうになる感覚に囚われかけ、サラはふるっと頭を振る。
それでも、隣に座っている男の顔を見るよりはましだと、サラは頑なにファルクから顔を背けたまま。
視界の端にすらその姿が目に映るのが許せないとばかりに、窓の外の闇に視線を向けていた。

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