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令嬢は元暗殺者に恋をする
第74章 最後の告白
 胸にすがりついてきたサラは悲痛な声を上げる。しかし、サラとてわかっているはずだ。
 話し合いでおさめられるような状況ではない。
 目の前に現れた男たちを倒さない限り、この窮地を切り抜けることはできない。

 助かるためには、ハルに頼るしかすべはない。
 やらなければ殺される。
 もしも、現れたこの男たちがハルが元いた暗殺組織の者だったらどうするのか。
 そうなれば、嫌でもハルは剣をとって戦わなければならない。

 自分が一生ついていくと心に決めた男性(ひと)は、そういう運命を背負い生きる人。
 それを承知で側にいると心に決め誓ったのだと、サラはこの時、ようやく思い知ることになった。

 けれど、わかっていても……。

「ハル」

 何も言わないでと、ハルはサラの唇に指先をあてた。しかし、サラはその手を払いのける。

「いや……いやよ、いや! いゃぁ……」

 まるで聞き分けのない子どもように声を上げるサラに、ハルは困った笑いを浮かべる。

 無理はない。
 こうなることももちろん、予想済みだ。
 取り乱したサラを宥めて安心させてあげなければいけない。

 それが、今の自分にとって大切なことだというように、ファルクから視線を外したハルはいやいやをするサラに向き直る。

 どうしたら、俺を信じてくれるの?

「ねえ、聞いてサラ」

「いや……!」

 何も聞きたくないとひたすら首を振るサラの両肩をつかんで引き寄せ、抱きすくめる。

 いや、と繰り返して腕の中でサラが激しく抵抗する。
 抗わせない。
 身動ぐことも許さない。
 息もできないほどに、強くきつく、小刻みに震える身体を抱きしめる。

 やがて、あきらめたのか徐々にサラの身体から力が抜けていく。
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