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令嬢は元暗殺者に恋をする
第74章 最後の告白
「サラ」

「何……?」

「ごめんね」

「え?」

「少しだけ苦しい思いをする」

 きょとんとした目で見返すサラの頬をなで、指先を滑らせ唇に触れる。
 さらに、唇から離れたハルの右手がゆっくりと落ちてこぶしを作る。

「どうしたの……っ」

 もう片方のハルの手がまるで逃がさないというように、サラの腕をきつくつかむ。
 腕に食い込むハルの指にサラは息を飲み、さらに、何かに感づいたのか咄嗟にその手から逃れようと身をよじる。

「ハル……」

 サラの身体が強ばった。
 逃げられないと、察した瞬間、サラの顔が歪む。

「いや……ハルやめて」

「一瞬だから」

 何もかも、終わっているよ。
 サラが眠っている間に終わらせる。
 だから、サラが怖い思いをすることはない。

 しかし、次の瞬間、思わぬ行動にサラは出た。
 サラの両手によって右手のこぶしを、それも抱え込まれるように握りしめられ、いや、押さえこまれてしまった。

「何? 今、私に何かしようとしたわね。何をしようとしたの? ねえ!」

「これから起こる光景はサラには耐えられない。できることなら見せたくはない」

「それで、私を気絶させて、その間にハルはひとりで戦おうとしたの? どうして!」

 サラが眠っている間にすべてを終わらせるつもりだった。
 なのに、まさかサラに感づかれてしまうとは。
 サラの目が食い入るようにこちらを見上げていた。

 言葉にせずともその目が語っている。
 私も最後までハルと一緒に見届けると。

 ハルは困ったように笑い、握った右手を緩めて解く。

「サラ、手を離して」

「離さない!」

「何もしないよ」

「うそ!」

「本当だよ。それに、何かするつもりならもうとっくにしている。あきらめたよ」

 緊張で強ばらせたサラの肩からようやく力が抜けていく。
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