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令嬢は元暗殺者に恋をする
第75章 戦い -1-
 まずは。

 七人──。

 誰ひとりとして逃しはしない。

 闇に包まれたカーナの森に、疾くと黒い疾風(かぜ)が翔ける。
 それは死を呼ぶ黒い疾風。


「ああ……」

 思わず声をもらし、サラは両手で口許を押さえ込む。
 ハルが戦う姿を初めて目の当たりにした。
 目眩にも似た感覚に足元をよろめかせ、側の木の枝を咄嗟につかむ。
 が、つかんだ枝はもろくも根元からぽきりと折れ、サラはその場に両手両膝をついて座り込んでしまった。

 叫び声をあげることもなく一人、二人と次々に倒れていく敵の姿。
 いとも簡単に、あっけなく。

 現れた奴らなど相手にもならないという戦いぶりであった。
 この程度のことなど、たいしたことではないと口にしたハルの言葉に偽りはなかった。

 それでも、いったい敵が何人いるのかわからない。
 途切れることなくハルに襲いかかってくる。
 手が震えた。
 足に力が入らず立ち上がることさえできない。

 奇妙な気配を感じて戦慄く。
 剣を交える音がほとんど聞こえない。
 敵の上げる叫び声も。
 苦しみに悶える姿も。 

 ハルは一撃で相手に反撃の隙も与えず倒していく。
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