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令嬢は元暗殺者に恋をする
第75章 戦い -1-
強い。
これがハルの強さなの。
私……ハルがあいつらに殺されてしまうかもしれないなんて。
先ほどまで抱いていたそんな不安は杞憂以外のなにものでもなかった。
ハルが負けることはない。だが、素直に喜べる状況ではなかった。
夜会の時、シンとファルクが剣を交えたものとはまったく違う。
力業でファルクを押し、遠くから流れ聞こえる円舞曲にあわせ、まるで踊るように剣を振るシンの戦いに、剣技の美しさに目を奪われ胸が高鳴った。
しかしそれは、あの時シンはファルクの命までとろうとはしていなかったから。
そのことをわかっていたから。
けれど、目の前で繰り広げられているのは正真正銘の殺し合い。
どちらかが生きるか死ぬかの命をかけた戦い。
もっとも、圧倒的な強さで一方的にハルが敵を倒している状況ではあったが。
その時、馬車の側、背を向けているハルに狙いを定め、一人の敵が弓に矢をつがえたのが目に入った。
「ハル! 後ろ!」
声を振り絞り、身を乗り出してサラは叫んだ。
たまらず地についた両手で土を掻く。
この森で賊に襲われた子どもを助けるため戦ったハルは、その賊が放った矢に肩を貫かれ深手を負ったのだ。
いや……。
ハル、気づいて。
お願い!
「ハル!」
これがハルの強さなの。
私……ハルがあいつらに殺されてしまうかもしれないなんて。
先ほどまで抱いていたそんな不安は杞憂以外のなにものでもなかった。
ハルが負けることはない。だが、素直に喜べる状況ではなかった。
夜会の時、シンとファルクが剣を交えたものとはまったく違う。
力業でファルクを押し、遠くから流れ聞こえる円舞曲にあわせ、まるで踊るように剣を振るシンの戦いに、剣技の美しさに目を奪われ胸が高鳴った。
しかしそれは、あの時シンはファルクの命までとろうとはしていなかったから。
そのことをわかっていたから。
けれど、目の前で繰り広げられているのは正真正銘の殺し合い。
どちらかが生きるか死ぬかの命をかけた戦い。
もっとも、圧倒的な強さで一方的にハルが敵を倒している状況ではあったが。
その時、馬車の側、背を向けているハルに狙いを定め、一人の敵が弓に矢をつがえたのが目に入った。
「ハル! 後ろ!」
声を振り絞り、身を乗り出してサラは叫んだ。
たまらず地についた両手で土を掻く。
この森で賊に襲われた子どもを助けるため戦ったハルは、その賊が放った矢に肩を貫かれ深手を負ったのだ。
いや……。
ハル、気づいて。
お願い!
「ハル!」

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