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令嬢は元暗殺者に恋をする
第79章 戦い -5-
先ほどまでの張りつめたような緊迫感はどこへいったのか、何やら少年とハルとの間におかしな空気が流れ始めた。
「だから、こんな風に話がこじれて、お姉さんまで泣かせてしまうことになったんだ。女を泣かせるなんて最低だよ! 俺なら好きな女、絶対に泣かせたりしない!」
やがて、何かを決心したように少年は勢いよく立ち上がる。
きつく手を握りしめ、気丈にもこちらを睨み返す。
「俺ともう一度戦え!」
何を決意して言い出すのかと思えば、ずいぶんと突拍子もないことを口にし出した。
「おまえと戦う?」
「笑うな! 俺なんか相手にならないって言いたいんだろ? わかってるよ!」
「そんなことは一言も言っていないよ」
「言ってなくても、そう顔に書いてあるんだよ! 嫌みなやつだな」
「おまえが勝手にそう思い込んでいるだけではないのか?」
「な、何なんだよ……いちいち、ああ言えばこう言う!」
少年はだんと足を踏みならした。
「とにかく俺と戦え! あんたを殺すつもりで戦えば俺は敵だ。お姉さんが俺をかばう理由はなくなる。だから、その代わりお姉さんに意地悪するな。恋人なんだろ? 優しくしてやれ」
強い眼差しでこちらを見上げる少年に、ハルはふっと笑う。
よもや、敵であるこの少年にそんなことを言われてしまうとは。
「くそ! また笑ったな。鼻で笑ったな!」
ふと、少年の姿が過去の自分と重なった。
俺もこんなふうに、よくレイに生意気を言って食ってかかったことがあったな。
と、そんなことを思い出す。
そして、ハルは地に突き立てた剣を抜き、静かに鞘におさめた。
俺も何を甘いことを考えているのか。
敵に情けをかけるなど、以前だったら考えられない。
いや、あり得ないことだった。
え? と驚いたように揃って目を見開くサラと少年。
「だから、こんな風に話がこじれて、お姉さんまで泣かせてしまうことになったんだ。女を泣かせるなんて最低だよ! 俺なら好きな女、絶対に泣かせたりしない!」
やがて、何かを決心したように少年は勢いよく立ち上がる。
きつく手を握りしめ、気丈にもこちらを睨み返す。
「俺ともう一度戦え!」
何を決意して言い出すのかと思えば、ずいぶんと突拍子もないことを口にし出した。
「おまえと戦う?」
「笑うな! 俺なんか相手にならないって言いたいんだろ? わかってるよ!」
「そんなことは一言も言っていないよ」
「言ってなくても、そう顔に書いてあるんだよ! 嫌みなやつだな」
「おまえが勝手にそう思い込んでいるだけではないのか?」
「な、何なんだよ……いちいち、ああ言えばこう言う!」
少年はだんと足を踏みならした。
「とにかく俺と戦え! あんたを殺すつもりで戦えば俺は敵だ。お姉さんが俺をかばう理由はなくなる。だから、その代わりお姉さんに意地悪するな。恋人なんだろ? 優しくしてやれ」
強い眼差しでこちらを見上げる少年に、ハルはふっと笑う。
よもや、敵であるこの少年にそんなことを言われてしまうとは。
「くそ! また笑ったな。鼻で笑ったな!」
ふと、少年の姿が過去の自分と重なった。
俺もこんなふうに、よくレイに生意気を言って食ってかかったことがあったな。
と、そんなことを思い出す。
そして、ハルは地に突き立てた剣を抜き、静かに鞘におさめた。
俺も何を甘いことを考えているのか。
敵に情けをかけるなど、以前だったら考えられない。
いや、あり得ないことだった。
え? と驚いたように揃って目を見開くサラと少年。

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