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令嬢は元暗殺者に恋をする
第7章 ハルの真意
「とってもきれいなお顔のお兄ちゃんでね。それでね、手当をしてもらっている間いろいろとお話ししたんだ。そしたらお兄ちゃんもうさぎが大好きだって言ってたよ。特に雪うさぎが好きなんだって。ねえ、雪うさぎって真っ白なうさぎのことでしょう?」

 テオはうなずき返す。

 白い毛に赤い目をした、おもに雪の降る寒い地方に生息するうさぎのことである。
 このアルガリタでも山奥にいけば、見かけることはできる。

「そしたら……たくさんの悪いやつらが現れて……」

 そこで幼い少年はいったん言葉を切り、小さな身体を震わせうつむいた。
 よほど恐ろしい目にあったのであろう、震えは一向に止まらない。

 テオは少年の肩にそっと手をおき、うさぎの手当をしている師と、少年を交互に見やった。

 少年はついと顔を上げ、気丈な目でテオを見上げ、そして続けた。

「そいつらはいっせいにぼくたちめがけて矢をはなったんだ。数えきれないたくさんの矢が飛んできて。ぼくをかばいながら、お兄ちゃんはそいつらの矢を剣ではじいて戦ってくれたんだ。でも矢の一本がお兄ちゃんにあたって……」

 再び少年はぶるっと肩を震わせた。

 テオとサラは固唾を呑み、少年の次の言葉を待ち続けた。

「もうだめだと思ったけど、お兄ちゃんはすっごくきびしい顔でぼくに言ったんだ。ここはくい止めるから逃げろって。でも、ぼく、まよったんだ。だって、ぼくひとりで逃げたらお兄ちゃんが……でもお兄ちゃんはお母さんみたいにやさしく笑って言うんだ。早く街に行きなさいって。街に行ったらうさぎをお医者さまにみせるんだよって」

 途端、少年は顔をくしゃくしゃにゆがめ、大粒の涙を浮かべた。

「ぼくがこうしていられるのも、あのときお兄ちゃんが助けてくれたからなんだ。お兄ちゃんだってけがをしていたのに。なのに、ぼくはお兄ちゃんの名前もしらないし、そのあと、お兄ちゃんがどうなったかもしらない。もしかしたらあいつらに殺されたのかも……」

 とうとう泣き出した少年の頭を、テオは優しくなでた。
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