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令嬢は元暗殺者に恋をする
第7章 ハルの真意
「そのお兄ちゃんが戦っているところを君は見たかい? とっても強かっただろう?」

 テオの問いかけに、少年はうんとしゃくり上げながら首を縦に振る。

「走りながら何度も振り返ったよ。お兄ちゃんはすごく強かった!」

「だったら、死んだりするわけがないじゃないか」

「そうよ! そのお兄ちゃんが、そんな悪い奴らにやられたりするものですか!」

 そこで、初めてサラも少年を元気づけるために口を開いた。

「ほんとう?」

 涙に濡れた顔を上げ、幼い少年はテオと横から割って入ってきたサラを交互に見る。

 テオは力強くうなずいた。

 少年はごしごしと手の甲で涙を拭い、あどけない顔に満面の笑みを浮かべた。

「あのね……ぼく、大きくなったら、お兄ちゃんみたいなつよい男になるんだ。だからぼく、騎士になる。そうして弱い人たちを守ったり、こまった人を助けたりするんだ」

 テオは微笑みを浮かべて、何度も少年の頭をなでた。

 少年を襲った事件は、少年の心に恐怖だけを残しただけではなかった。
 いや、心に刻まれた恐怖は一生消えないかも知れない。
 けれど、それ以上に少年は強くなって、騎士になるという大きな夢を持つことができた。

 そうだったのか……。

 テオは視線を落とした。

 逃げる少年に賊たちの追っ手を許さないため、あいつは賊を殺した。
 中途半端に賊を生かしてしまえば、この少年に顔を見られている以上、賊たちはいつか再び少年の命を狙う可能性がある。
 少年を無事に逃すため自ら犠牲となり、傷ついた身体で二十人の賊を相手に無謀な戦いを挑んだ。

 何故、おまえは見ず知らずの子どものために命を投げ出すような真似ができる?
 何故、本当のことを言わなかった。
 殺しはいけないことだと思う。
 だけど、果たしてこのご時世にそんなきれい事ばかりが通用するのだろうか。
 何が悪くて、あるいはそうでないのか、僕にはわからなくなってしまったよ。
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