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令嬢は元暗殺者に恋をする
第81章 離さない、離れない
「そいつは気絶しているだけだ。怪我ひとつしていない」

 よかった、とサラはほっとした表情で胸に手をあてる。

「この森を出たら、シンか、もしくはシンの仲間たちがいる」

「シンが?」

 どうしてシンが? と言いかけたサラの言葉を遮りハルは続ける。

「彼らに屋敷まで送ってもらうといい」

「ちょっと待って……屋敷って……」

 突然何を言うの? とサラは怪訝な顔をする。

「そして、おまえも」

 と、今度は少年に視線を移す。

「サラと一緒にこの森を出た後は自由だ。どこへでも、好きなところへ行け」

 自由と呟いて、少年は何故か戸惑いをみせる。

「俺、お姉さんに命を救われた。だから俺、お姉さんの側にいてお姉さんのことを守り……」

「必要ない」

 にべもなく言い切られ、少年はしゅんと頭をうなだれる。

「彼女は大貴族のご令嬢だ。本来なら、俺やおまえごときが容易く口をきける相手ではない」

 そして、ハルはもう一度サラを見る。
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