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令嬢は元暗殺者に恋をする
第7章 ハルの真意
 うさぎの治療を終え、無事少年を家まで送り届け家に戻った時には、すでに夜も遅い時間となってしまった。

 振り返ってみると、何ともめまぐるしい一日であった。
 診療所を出ていってしまったハルは、まだ帰っている気配はない。

 もしも、ハルがあの場に現れたら、少年はどんなに喜ぶだろうと思ったが、それはできれば避けたいことであった。

 ひょんなことで少年の口から、カーナの森の事件のことが他人にもれ、それが役人の耳にでも入るようなことがあれば、ハルの身が危うくなるかもしれないからだ。

 もっとも、あの男がそう簡単に捕まるわけなどないであろうが。

 あの幼い少年にとって、ハルは通りすがりの名前すら知らない、自分を救ってくれた英雄として、いつまでも心に残り続けるだろう。

 厳重に戸締まりの確認をし、テオは師の書斎へと足を運んだ。
 今日起こった出来事を包み隠さず師に語る。

 自分が薬の調合を誤り、患者を命の危険にさらしてしまうところだったこと。そして、ハルの行動も。

 ことの次第を全て告白するテオに、ベゼレートは変わらない笑みを浮かべるだけであった。
 とくにテオを責めるわけでもなく、いつもの優しく穏やかな眼差しで。

「テオはよくがんばりましたね。説明を聞く限り、間違いなくその子は肺炎を起こしかける手前だったかもしれません。それに、その患者さんは結局、夕刻にはお見えにならなかった。テオの薬がよく効いたのでしょう。最善の処置を施してくれたこと、お礼をいいますよ。ありがとう、テオ」

 ですが、と声を上げるテオをベゼレートは手で制した。

「私は少し過保護になっていたのかもしれませんね。本当はあなたは立派に薬師として一人でもやっていけるほどの能力をもっているにもかかわらず、私の存在があなたの才能を押し潰してしまっていた」

 ベゼレートはいったん、言葉を切る。

 テオは不安そうに膝の上に置かれた手を動かしていた。

 何やら考えるところがあるのか、しばしの間黙りこくっていたベゼレートは、やがて決心したように顔を上げ、真剣な面持ちで口を開いた。
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