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令嬢は元暗殺者に恋をする
第83章 王女アリシア
 その後、ファルクは女王の監視のもとに置かれることになったが、つい先日、城に忍び込んだ何者かによって殺害された。

 あるいは、ファルクの口を封じるためにイザーラが殺したのか……。

 何にせよ、真相を知るすべはない。
 すべての真実は闇へと葬り去られてしまった。

 ハルはわずかに顔を歪めた。

 よもや、相手がここまでやるとは思わなかった。
 いや……。

 ハルは斜めに視線を落とす。

 本当に思わなかったというのか?

 せめてもの救いは、アリシア王女がそれについて自分を責めはしなかったこと。そして、このことを悲観的にとらえていなかったということであった。

「だが、これで母がこの国の法に触れているということが明らかとなった。それを知ることができただけでも私には大きい。だからハル、そんな思いつめた顔はするな。それに、私は彼女が救われただけでもよかったと思っている」

 アリシアが言う彼女とはサラのことだ。

「そして、母がレザンの暗殺者を雇い私を殺そうとしていることも……」

 そこで、アリシアは表情を翳らせた。
 その美しい面は儚げで、今にも消えてしまいそうな雰囲気だった。
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