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令嬢は元暗殺者に恋をする
第7章 ハルの真意
「前々から考えていたことがあったのですよ。もしかしたら、良い機会かも知れませんね。どうでしょう、テオ、私から離れて自立してみるのは?」

 よもや、師の口からそんな言葉が出るとは思いもよらず、テオは声を出すこともできず愕然とした。

 だが、すぐに我に返り、激しく首を振る。

「できません、それだけはできません。僕をずっと先生のお側に置いて下さい」

 ベゼレートはそっとテオの肩に両手をかけた。

「テオ、よく聞きなさい。世の中にはまだまだ医者や薬師を必要としている地域がたくさんあるのですよ。あなたを必要としている人が大勢いるのです。そういった人々の助けとなるのがあなたの使命だと思うことはできませんか?」

 いいえ、とテオは弱々しい目を師に向ける。

「先生は僕を評価しすぎです。一人でやっていくには僕はまだ未熟すぎます。もっと、たくさんのことを先生から学び、勉強しなければ」

「私の知っていることはすべてテオに教えたつもりですよ。それにテオはあまりにも堅苦しすぎます。もっと、気を楽にして他のことにも目を向けてみるのも悪くはありませんよ。そうですね、たとえば恋をしてみるとか」

 ベゼレートはふと、口許に笑いを浮かべた。

「考えてみると、あなたの回りではそういった華やかな話の一つも聞きませんからね。もっとも、それは私も反省せねばならないこと。毎日勉強に私のお手伝いでは、恋をする暇もなかったのでしょうから。そういった意味ではサラを見習ってみてはどうですか? あの少年に恋をしているサラの表情は、とても生き生きとして、楽しそうとは思いませんか?」

「それは……確かにそうですが。ですが、相手が悪すぎます! だいいち、サラとあいつとでは身分が違いすぎる」
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