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令嬢は元暗殺者に恋をする
第84章 暗殺組織レザン・パリュー
炎天はレイの元へと歩み寄り、腰の剣に手をかけた。
それでも、レイは動じる素振りすらみせない。
それどころか、軽く眉根を寄せ、首を横に振って小さくため息をもらす。
信じて貰えないのが心底残念だという表情である。
「炎天」
それまでこの成り行きを黙って見続けていた別の男が炎天を止める。
「わかっている。長同士の殺し合いは組織の掟として絶対に禁じられている。だが……黒天自らが自分の命を差し出すと言ったのだから、問題はないはずだ。そうだろ?」
「好きになさるといいでしょう」
「ふ、余裕だな。その余裕の意味は何だ? 俺がおまえを殺すわけがないと思っているからか? ああ、そうだな……貴様が土下座をして許しを請うなら、命だけは助けてやってもいいぞ。黒天の座を降り、俺の下として働くというのならな。この俺が思う存分貴様をこき使ってやる」
「ご遠慮いたします」
即座に切り返したレイに、炎天はぎりぎりと歯を鳴らした。
「ならば死ね! 安心しろ、貴様が死んだ後、黒天の座はハルに継がせる。奴はまだまだ使える。俺が奴を教育し直して可愛がってやる。おまえの代わりにな!」
炎天は怒りのままに腰の剣を抜き放ち、その切っ先をレイの首筋へと突きつけた。
男の動きは素早い。
逃げきれなかったのか、それともあえてそうしようとは思わなかったのか、レイは微動だにしない。
鋭い剣の切っ先がレイの首筋を薄く裂き、ぷつりと赤い血の玉が浮きあがる。
それでもレイの表情には少しの動揺も驚きも浮かんではいなかった。
だが、甘んじて男の不遜な行為を受け入れるつもりはないようだ。
それはゆるりと放たれた、レイの身を取り巻く気配から察知された。
たおやかな見かけと、およそ剣を振るって戦う雰囲気のないレイの身に、じわりと静かな殺気がにじみ始めた。
レイのまなじりが細められる。
再び爆ぜた暖炉の炎がレイの瞳に映り込み、極上の翡翠に底知れぬ危うい光が揺れ動く。
その時、怒りにまかせて剣を振り上げようとする炎天の手首を銀髪の少年がつかんだ。
つかまれた手首の痛みに炎天は顔を歪める。
それでも、レイは動じる素振りすらみせない。
それどころか、軽く眉根を寄せ、首を横に振って小さくため息をもらす。
信じて貰えないのが心底残念だという表情である。
「炎天」
それまでこの成り行きを黙って見続けていた別の男が炎天を止める。
「わかっている。長同士の殺し合いは組織の掟として絶対に禁じられている。だが……黒天自らが自分の命を差し出すと言ったのだから、問題はないはずだ。そうだろ?」
「好きになさるといいでしょう」
「ふ、余裕だな。その余裕の意味は何だ? 俺がおまえを殺すわけがないと思っているからか? ああ、そうだな……貴様が土下座をして許しを請うなら、命だけは助けてやってもいいぞ。黒天の座を降り、俺の下として働くというのならな。この俺が思う存分貴様をこき使ってやる」
「ご遠慮いたします」
即座に切り返したレイに、炎天はぎりぎりと歯を鳴らした。
「ならば死ね! 安心しろ、貴様が死んだ後、黒天の座はハルに継がせる。奴はまだまだ使える。俺が奴を教育し直して可愛がってやる。おまえの代わりにな!」
炎天は怒りのままに腰の剣を抜き放ち、その切っ先をレイの首筋へと突きつけた。
男の動きは素早い。
逃げきれなかったのか、それともあえてそうしようとは思わなかったのか、レイは微動だにしない。
鋭い剣の切っ先がレイの首筋を薄く裂き、ぷつりと赤い血の玉が浮きあがる。
それでもレイの表情には少しの動揺も驚きも浮かんではいなかった。
だが、甘んじて男の不遜な行為を受け入れるつもりはないようだ。
それはゆるりと放たれた、レイの身を取り巻く気配から察知された。
たおやかな見かけと、およそ剣を振るって戦う雰囲気のないレイの身に、じわりと静かな殺気がにじみ始めた。
レイのまなじりが細められる。
再び爆ぜた暖炉の炎がレイの瞳に映り込み、極上の翡翠に底知れぬ危うい光が揺れ動く。
その時、怒りにまかせて剣を振り上げようとする炎天の手首を銀髪の少年がつかんだ。
つかまれた手首の痛みに炎天は顔を歪める。

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