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令嬢は元暗殺者に恋をする
第84章 暗殺組織レザン・パリュー
「どういうつもりだ〝白天〟」

 レイに視線を据えたまま、炎天は割り込んできた少年に言い放つ。

「おまえの、推測にしかすぎないどうでもいい話を延々と聞かされたけど、まだその人物がハルだと確定したわけじゃない」

「本気でそんなことを言っているのか? もはや、決まったようなものだ」

「レイはちゃんと任務を果たした。組織から脱走したハルを捕らえようとしたって何度も言っているのに。なのにどうして」

 疑うのかなあ? と白天と呼ばれた少年は、首を傾げて背の高い炎天を見上げる。
 まだ幼さを残した顔立ちに、無邪気な仕草の少年であった。

「それでも文句があるなら、レイのかわりに僕が相手になるけど」

 すっと目を細めた少年の、色素の薄い灰色の瞳の奥に底知れぬ危険な色がゆるりと過ぎっていった。
 あどけない表情と仕草とは裏腹に、得たいの知れない狂気じみた本性を垣間見せる。

「おまえが俺の相手をするだと?」

「何? 不服はないでしょ?」

 その顔はにっこりと笑っているが、目が本気であった。

「この場でおまえを肉塊に変え、狼の餌としてレザンの山に捨ててやる。言っておくけど僕、強いよ。おまえなんかよりもね」

 少年の石灰色の瞳が冷たく光る。
 それまで強気だった炎天がたじろいだ。
 レイをのぞく他の者も、椅子から腰を浮かせる。
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