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令嬢は元暗殺者に恋をする
第84章 暗殺組織レザン・パリュー
 部屋を退出したレイは、中庭をぐるりと取り囲む冷えた石造りの回廊を歩んでいた。

 濁った灰色の空から静かに粉雪が舞い落ちる。
 レザン・パリューの冬は長くそして、厳しい。
 たとえば、アルガリタがそろそろ秋を迎えようとする頃、この地には雪が降り始める。

 きらきらと輝く美しい大地だと、誰が言ったのだろうか。
 灰色に染まった空は、息もつまるかのような憂鬱な色。
 太陽の光さえ、その重たい雲に遮られ光は地上へと届かない。
 青空が広がることじたいまれだ。
 特にこの季節は。

 ふと立ち止まり、レイは空を見上げた。
 身を切るほどの冷たい風が通り過ぎていく。

 後頭部のあたりで束ね背に垂らしたレイの長い黒髪が風に揺れる。
 漂う雰囲気は儚げで、女性と見間違えるほどのたおやかな姿。

 レイは回廊の手すりに歩み、手のひらを差し出した。
 白くしなやかなその手に、ひらりと雪が舞い落ちる。

 その仕草のひとつひとつが、優美で人目をひきつけた。
 手のひらを見つめるレイの口許には穏やかな微笑み。
 それは作り物ではない、心から嬉しさをたたえた。
 先ほど炎天に向けた冷たい光を放つ翡翠色の瞳も、今は穏やかであった。

 ハル……大切な女性(ひと)を見つけることができたのですね。
 安心しました。
 その手を、大切な人の手を決して離してはいけないですよ。
 二度と手放しては。
 あなたの力で守っておあげなさい。
 できるでしょう?
 あなたになら。

 溶けた雪が小さな水滴となって手のひらに広がっていく。
 その手を握りしめ歩きだそうとしたレイの背に。

「レイ!」

 と、呼びかける少年の声。
 レイは振り返る。
 離れた場所から、先ほどの銀髪の少年がこちらに向かって駈け寄ってくる姿が見えた。

 ここは暗殺組織。
 その殺伐とした空気には不釣り合いな、あどけない笑顔。
 無邪気に笑う姿はどこにでもいる普通の少年ではあるが、それでも彼は暗殺者。
 それも、この闇の世界を仕切る長のひとり〝白天〟。

「どうされたのですか? クランツ」

 クランツと呼ばれた少年は、軽く息をはずませ背の高いレイを見上げる。
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