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令嬢は元暗殺者に恋をする
第85章 それから
「何ができあがるのか不安しかないよ」

「今度こそまかせて。お隣のマイヤーさんが作り方教えてくれるって言ったから」

 キリクは苦笑いを浮かべた。

「どうしてそこで笑うのかしら」

 サラはむうっと唇を尖らせる。

「サラは、ちょっとばかし物覚えが悪いからね。一生懸命がんばってるのはわかるんだけど。でもまあ、仕方がないか」

 もともと貴族のお嬢様だったんだしね、とキリクは肩をすくめる。

「物覚えが悪いって失礼ね。そういうキリクこそ、ちゃんとアルガリタ語覚えたの? 覚えたらハルが学校に通わせてくれるって言ってたでしょう?」

 キリクはどこか呆れたように口を開けサラを見上げる。

「覚えたも何も、今こうしてサラと普通に会話してるじゃないか」

 あ、そっか……と、サラは納得する。

 確かに、アルガリタ語で何の不自由もなくキリクと喋っている。
 あまりにも自然に会話をしていたからすっかりと失念していた。

 キリクを面倒みるようになって数ヶ月。
 出会った当初はまったくキリクと言葉が通じなくて不安を覚えたものだが、今では問題なく会話ができるようになった。
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